K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

2016

Elliott Sharp, Mary Halvorson, Marc Ribot: Err Guitar (2016) 脳内回廊の皮膜

ボクはギターに好ましくない先入観のような偏見が(かつて)あった。そんな話を大学の同級生、といっても試験のときにしか見なかった軽音所属のM君、にすると、最初に聴かせてくれたのはジム・ホールのベルリン。それで偏見はするっと無くなったが、あまり聴…

( ECM2527) Craig Taborn: Daylight Ghosts (2016) その断面に顔を覗かせる埋蔵物

幾つかのアルバムを聴くなかで、クレイグ・ティボーンの音響的な面白さ、美しさ、味わい深さを感じ、徐々に深みに入っているような感覚がある。決定的だったのは、ECMからのAvenging Angelで、現代音楽が抱える「ある種の空気感」のようなものを、ジャズにre…

(ECM2528) John Abercrombie: Up And Coming (2016) 1970年代のアルバムと云われれば

時間が止まった、ようなアルバム。これが1970年代のアルバムと云われれば、そうだと思うだろう。そこに時間の流れがない。中庸なインタープレイを交えたジャズの小品、なのだ。それがECMに相応の数がありそうで、あまりないようにも思えるがどうだろう。 ボ…

(ECM2517) Colin Vallon: Danse (2016) ただの清澄なピアノトリオのようで、案外毒っぽい

先日、ECMから直接届いたLPレコード。最初は酔っていたこともあって、音にピンとこなかったが、音質、内容ともに、面白さを感じてきた。ここ数日、超多忙なこともあって、あまりブログも更新できていないが、こればかり聴いていた。 コリン・ヴァロンはスイ…

蓮見令麻: Billows of Blue (2016) 在ったこともない記憶を辿るような

蓮見令麻のピアノとヴォイス。それにドラムとベースが寄り添う。蓮見が主宰する、このRuwehレーベルのアルバムの魅力は、アコウスティックな音響空間の柔らかさ、だと思っている。最近、多くの(全てでないが)ECMのアルバムに「作られた」アコウスティック…

Miroslav Vitous: Ziljabu Nights (Live At Theater Gütersloh) (2016) 音の柔らかな膨らみ

何回か聴くと、音の柔らかな膨らみ、それはほとんどベースから、を強く感じ、ECMの録音では感じられない暖かみ、が気持ち良い。素晴らしい。ただ過ぎ去った時間、のようなものに対する愛惜のようなものを感じる。それはラファロのGloria's Stepを取り上げる…

Fred Hersch: Sunday Night At The Vanguard (2016) むしろ力強さ、を感じさせる

発売直後に入手。それから、かなり聴いている。何がいいのか、というと、録音がよい。ハーシュのピアノの美音を、上手く納めている、と思う。特に冒頭、弾けるようなピアノの弱音に惚れ惚れする。それだけで十分、だと思う。録音はECMの米国録音を担当してい…

Chassol : Ultrascores II (2016) コンピレーションだけど

昨年、一時期シャソールには随分はまった。とにかく快感指数が高い。カリブやインドの音楽をタネに、ミニマルをベースにした音に組み替える。基本的にはヴィデオとの組み合わせで、音の効果を更に高めるような感じ。残念なのは、音響的な良さには無頓着なこ…

Jinchūriki: Kyūbi (2016) 美しいということ

この一ヶ月、体調を崩していて、音を意識に当て、その反応を探り、楽しむような遊び、はできなかった。音を意識に当てる、感覚になる前に、感情に刺さって激痛が走るような感じ、だったような気がする。 つい数日前に復旧したと同時に、ある種の「余裕」(メ…

Donny McCaslin: Beyond Now (2016) ちょっと変化に乏しい印象

新作Black Starリリースの後に急逝したデヴィッド・ボウイ関連銘柄で急騰、の趣があるダニー・マキャスリンの新しいアルバム。かなりBlack Starの空気で統一された感じ。それが、やや退屈な印象を作るのだけど、ドラムに気持ちを持っていくと、相変わらずメ…

Frank Ocean: Blonde (2016) LPレコードを入手したが

何となくレコードが出ていることを知って入手。基本的にはダウンロードのみである。公式盤は僅かな期間だけCD/LPが販売されたようなのだけど、流通数は僅か。かなり高値がついている。 そんな訳で安価だったこともあり、手に入れたのだけど、それがどうもBoo…

カフカ鼾: nemutte (2016) 液状化する世界を

夏頃、名古屋で買った坂田明のCDでアイルランド系米人奏者ジム・オルークを知った。その彼が気になって音源を追いかけたが、カテゴリーのようなものか見ると、全く捉え所がない。 このアルバムはCD1枚分で1曲。3人のとりとめもない会話のような、音響的な…

John Escreet: The Unknown (2016) ジャズとimprovised musicの間に在るもの

今朝、Bandcampからダウンロードしたアルバム。$9也。円安傾向なので、1000円超えるが。メンバーを見て、ほとんど衝動的にクリックしてしまった。John Escreet(p), Evan Parker(sax), John Hébert(b), Tyshawn Sorey(ds)だからねえ。今年の欧州でのライヴ。 …

(ECM2515) Wolfgang Muthspiel: Rising Grace (2016) 予定調和のなかだから

珍しく新譜をチェック。というのは、24bit/88.2kHzの高分解能音源の販売サイトがあって、試したくなったのだ。$17は、現時点のCD通販より安価。しかも高分解能音源で入手できる。ボクは「ディジタル音源」に関しては、物理媒体に全くこだわりがないので、有…

Peter Evans: Genesis (2015-16) Amazing re-born "Pangea" in 21st Century

信じがたい音楽体験をしている、ような気がする。だけど、過去にもこんな体験をしたような気もする。静かな昂奮とともに音を聴き続けた。 1時間半を越える音源を聴き続け3回目だろうか。これが、昔、1975年のマイルス・デイヴィス日本公演「アガルタ・パン…

Corey King: Lashes (2016) ジャズとソウルの甘い交叉点

ジャズともソウルとも呼べるし、どちらとも云えないような楽曲。The Internet や Frank Oceanなんかもそうだけど、ある種の空気感、どこにもありそうで、そうでもなく、意識をすっと奥に引っ張るような空間。ジャズとソウルの甘い交叉点、という趣。 面白い…

Nakama: Grand Line (2016) レコード聴きの快楽、そのもの

昨日の「もっきりや」でのライヴの買い物。最近は記念品代わりに買っているのだけど、そんないい加減な動機をふっとばすアルバム。素晴らしい。 僅かな音を使って、音響的な空間を精緻に組み立てていく、そんな作業の過程を見ているような気がする。そして社…

Peter Evans: Lifeblood (2014-16 ) 音響的な凄み、秘めたる韻律

バンコクから帰ってきて、早速ダウンロード。$15である。 先日、yorosz氏のツイートで気がつき、bandcampで試聴して、驚いた。 Peter Evansの待望のトランペットソロでのアルバムくっっっそヤバい……!トランペットソロ数えるほどしか聴いたことない自分が言…

Tyshawn Sorey: The Inner Spectrum of Variables (2016) ジャズと現代音楽の垣根

勢いに乗って、Koan、Alloyに続きソーリーのアルバムをさらに聴く: 勢いでダウンロードし、最初に聴いたときは「何だこりゃ」と思った。ジャズではなくて、現代音楽じゃん、って。かなり好みなんだけど。聴いてから読んだ、Joe氏のコメントそのもの: で何…

Robert Glasper Experiment: ArtScience (2016) よくアルバムが出るなあ

この人、よくアルバムが出るなあ。これはRobert Glasper Experimentなので、ソウル風ジャズというか、ジャズ風ソウルというか、の内容。 よく聴くと、相変わらず、ドラムが叩き出すリズムが様々なパターンを作っているが、全く「無理がなくて」、ごく自然に…

rabbitoo: the torch (2016) 変化や違いに刮目すると

前作で、過去からの音の「変化や違い」に刮目すると、どうしてもその包絡線上に次作を置くので、快感のハードルは否応がなく高くなる。その意味で「音場」の変化のなさ、あるいは成熟のようなものに対して辛くなる。 かと云って、詰まらない訳でなく、なかな…

Fred Frith: Another Day In Fucking Paradise (2016) 帰りの列車で聴いている

帰りの列車で聴いている。 長い出張の最後は名古屋で打ち合わせ。出先からタクシーに飛び乗って、新幹線からしらさぎ。17時に打ち合わせから抜けだし、金沢へ最速で向かっている。 Bandcampからダウンロードし、かなり聴いているが、うまくイメエジが頭の中…

Steve Lehman: Sélébéyone (2016) 奇妙な味、が美味しかった

twitterを眺めて気を紛らわせていたら、Steve Lemanは現代のドルフィー(だったかな、いい加減ですが)を読んで、気になってBandcampからダウンロード。いつも参考にしているブログでもアップされていた。 はじめてのSteve Leman。

山中千尋: Guilty Pleasure (2016) 今風のリズムが気持ちよい

最近、apple musicでよく聴いている。ドラムが叩きだす今風のリズムが気持ちよい。一番良かったのは、電気ピアノを弾くタイトル曲だと思うが、どうだろうか。 デビューアルバムを店頭で聴き、そのまま買ったのは15年前。ヘッドホンを付けて試聴すると、ジャ…

Robert Glasper: Everything's Beautiful (2016) レコードで聴いてみた

月曜日、新宿でLPレコードを買った。結論からいうと正解。非常に音が良い。「グラスパのアルバムとして」、とても楽しむことができる。 音の分解能が高いので、音の構成要素をじっくり聴くも、もともとのトラックの雰囲気のようなものは分からなかった。それ…

Tavinho Moura: beira da linha - instrumental de viola (2016) 大洋レコードからの便り

このアルバムは、全くケレン味のないギターのソロ。カイピーラ・ギター、というブラジルの楽器らしい。詳しくは大洋レコードのサイトで。とても詳しく紹介されている。

Andy Stott: Too Many Voices (2016) ECMからガラスの向こうへ

ECMというガラス細工の部屋があって、そのガラスの向こう側で鳴っている、ような音だな、と思った。ジャズの外の音はいつも気になっている、のだけど、良いpilotのような情報がないと、うまく出会えない。 幾つかのサイトを眺めていたら、こんな記事が。「ジ…

大西順子: Tea times (2016) 日本語の歌詞(考)じゃないけど

大西順子の復活作でもあるTea times (2016)について。日本語の歌詞について、思うところ。

橋本一子, 中村善郎: duo (2016) 日本の軽音楽

少し古い言葉だけど、日本の軽音楽そのもので、洗練された到達点なんだろうな、と思う。橋本一子さんのピアノ、ヴォイスともに魅惑的であることは30年昔と何ら変わらず、いや、ますますsmoothになっていくことに驚きを隠せない。それにしても、共演の中村善…

Murray Allen & Carrington Power Trio : Perfection (2016) とても楽しめるアルバム

とても楽しめるアルバム。 デヴィッド・マレイはジャック・デジョネットのSpecial Editionで惹き込まれて、随分とレコードを買った時期がある。1980年代の真ん中あたりまで。だんだんと代わり映えしないアルバムに関心が引いた、ように思う。最近もモツポツ…