K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Lee Konitz: 日暮,蛙,蛍,そんな夏のはじめに聴きたくなったデュオの2枚


Lee Konitz & Michel Petrucciani "Too Sweet (1982, OWL)"
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(2009年7月16日 記)

一昨日は秋田から仙台に行き,市街地から随分離れた広瀬川上流の作並温泉に泊まった.風呂場は広瀬川沿い,といっても上流の渓谷といった風情.緑濃いなか, ゆっくりと浸かった.部屋から風呂場まで,薄暗い,古い木造の渡り廊下を歩く.気がつくと,日暮が聞こえてきた.外は揺れる梢しか見えなかった.同行の知人が,もう夏ですかね,と云った.小雨が気になり,僕は少しあいまいに頷いた.

夜があけると,低い雲が立ち込め小雨.次第に切れ始めた雲間から,強い朝日が差し込み,6時もまわるとすっかり晴れていた.気持ちの中で,仙台は梅雨が明けていた.(そのような知らせは今日になっても届いていないけど.)

その夜は大船で知人と呑んだ.とても風が強く,きっと浪が高いのだろうな,と思った.呑んだあと,その足でともに夜の散歩に出かけた.大船から北鎌倉,そして北鎌倉から葛原が丘の分岐をとおる丘を越える路.この路には眼に見えぬ結界を越え越え歩くような感覚がある,というようなことを話ながら散歩.途中でかすかに蛙の音が聞こえ,脇道にそれる.蛙の音が高くなるが,街灯から伸びる影が田に落ちると静まった.気がつくと我が影のなかに蛍の灯がみえた.一昨年,京都の疎水端で見て以来.懐かしい.
蛙鳴かぬ静かな田をしばらく眺めていた.突然,知人が蛙の擬音を出すと,均衡が破れ蛙が一斉に鳴き出す.大騒動.すっかり愉快な気持ちで散歩を続けた.そんな昨夜は愉快が抜けず,なかなか寝付けない夜を過ごした.

そんな日々もあるのかなという数日を過ごしたが,そんな静かな夏のはじまりは珍しいし嬉しい.今日も,雲が垂れたあいまいな夕暮れを眺めて時間を過ごしている. 何を聴こうか考えるよりも,iPODで順不同に再生し,気に入ったものを取り上げると,今日はLee Konitz (as)のDuo.かつてCool派と云われたそうだが,夏のはじめに合うのは,寒いから?熱いから?


Lee Konitz &Michel Petrucciani "Too Sweet (1982, OWL)"
Lee Konitz (as), Michel Petrucciani (p) 
このフランスOWLレーベルは趣味がとても良く,中古の棚では無条件に買う.8割打者.asのトーンが奥深い空間に消えてくようななかをピアノが漂う幸せな時間をすごせる.



Lee Konitz&Red Mitchell (b) "I Concentrate On You (1974, Steeple Chase)"
Lee Konits (as), Red Mitchell (b)
この Steeple Chaseはデンマーク,欧州独特の感性はOWLとも似ているが,微妙に期待を外すことが多い感じ.正統派を狙いすぎている.いつも89点くらいの詰め. これもいい演奏なのだが,Alternate takeを詰めすぎて,CDはアルバムの体をなしていない.が個々はとてもいい.Red Mitchell は菅野邦彦,鈴木勲との共演(Bass club)も良かった.

それにしても50年代のVerve盤とか,所謂名盤は聴いていないLee Konitzなのだけど,こんなのが好きだなあ.