K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

能登湾:十六夜の赫い月から垂れるひかり


能登湾の小さな入江に夕暮れの頃からいた。

東を臨むと海面から積乱雲が沸き立つ様に未だ夏であることを改めて知る。西を臨むと焦点の合わないレンズから投影されたような筋雲が折り重なり、傾いた陽を覆う秋空となっていた。そんなことを想いながら、ビールを呑んでいた。

遠く,富山湾へ開口した辺りで積乱雲から稲妻が海面に落ちる様をみたり、遠くの漁船が過ぎて行くのを見ながら呑む時間はゆっくり過ぎて行った。あまり海は好きじゃなくて、今まで出かけていなかったのだけど、いいものだなあと思った。

何杯もビールを呑んだ頃には、すっかり暗くなっていた。生暖かい風が少しずつ冷たくなる様子が気持ちが良い。雲が多く、月も星も見えない闇夜のようなひとときを過ごした。ふと、東の空が静かに賑やかしいように感じた。ぼんやりとした赫い玉が浮かんでいる。一瞬,それが月だと思わなかった位、赫い十六夜の月。思いの外,赫いひかりは強く、月から穏やかな内海のうえに垂れていた。海辺で呑んでいたので、酔眼には、足元から仄かな赫い路が月まで続いているように思えた。