K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

白山(2702m):翳りを知らぬ秋の朝を通り抜けて頂きまで


ボク達が歩く路からは朝日が見えぬが、見上げた先の尾根の先っぽから次第に光がひろがっていった。
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朝3時に起きて、4時に出かけた登山から帰ってきた。とても疲れている筈なのだけど、山から帰ってきたときには何か不思議にに昂奮する気持ちが取れないのだ。仕方がないので、いつも少しだけ文章と写真を整理した後には、近所で静まるまで呑んでいるのだ。(先週の能登旅行のことは、ちっとも書けていないのだけど)

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今シーズン4回目の白山連峰、3回目の白山に登ってきた。4回のうち2回は独り,あとは仲間と。今回は、金沢に来てからの山仲間Kさんと出かけた。さすがに同じルートでの登山は飽きるので、今回は観光新道を登りに、砂防新道を下りに使った。観光新道の尾根筋からの景観を期待しての登山なのだ。

3時に起きて4時に出発。昨日の雨のためか夜空はとても清明で、南に向かうクルマの窓から星がみえる。正面は木星だろう。硝子の偏光特性のためか時折,青白く冷たく煌めく。同じくらいの照度の星が東にみえる。なんだろうか?

朝6時の別当出合は既に明るく、大勢の登山客が砂防新道に向かう中,距離が長いために敬遠されがちな観光新道に向かった。そのまま尾根筋へ直登する路を登った。空は明るいのだが、朝日は未だ差し込まず、雨上がりのひんやりとした森のなかを、上へ上へと登り続けた。空は深い蒼色、散乱による白けた光は見あたらない。昨日の雨により大気の透明度が高くなっているようだ。



ボク達が歩く路からは朝日は見えぬが、見上げた先の尾根の先っぽから次第に光がひろがっていった。東の嶺か光が差し始めたのだ。


次第にボクたちの頭上から足元まで光が行き渡り始めた。とたんに皮膚の表面が乾き始めたような感触があり、ひりひりするよな心地になった。目の前の草木から垂れる朝露も光を放ちはじめた。



友人と歩く山旅も、歩いているときは独りと変わらない。そんな周りの光や草木や風のことを気にしながら、尾根筋を目指して登り続けた。陰る山路をうつむき加減で登り続けた。気持ちのなかでの山歩きのクライマックスは尾根筋に飛び出すとき。目の前に立ちはだかる山路が消え失せ、強い陽光と冷たい谷から吹き上げる風のもとに飛び出すのだ。笹は揺れているし、揺れる笹の朝露のひかりが流れていく。そのなかを好きなメロディやリズムを想いながら軽く登っていくとき。

尾根のうえはどこまでも明るく、初秋の景色が広がりはじめていた。青空のもと小さな避難小屋がとても可愛らしく見えた。ここで登山の半ば。少し遠回りの路だけど、明るい尾根を歩く気持ちにおされて、ボクもKも疲れを覚えてはいなかった。


翳りを知らぬ秋の朝を通り抜けて頂上に立った。登り5時間で11時着。月並みな表現だけど抜けるような青空。日差しが強く、熱い。北から西をみれば、千々に千切れた雲が覆っていた。南から東をみれば、御岳、穂高、槍の山々。槍から黒部五郎さらには薬師へと山嶺は伸び,立山から剱で急峻なクライマックスを迎える。剱の先で途切れた山嶺の向こうには、見えぬ白馬から伸びる山嶺が糸魚川へと落ち込んでいく姿が見えた。とても気持ちが良い。室堂の方をみると、次第に雲が沸き上がってきた。


12時頃から下山を始めた。下りの山路はなぜだか心象風景を残すような気持ちになれなくて、同行のKさんと馬鹿な話をしたりしながら、15時を随分まわってから別当出合まで戻った。