K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Herbie Hancock: Secrets (近所の酒場への進物2)

Herbie Hancock: Secrets(Columbia,1976)

   A1. "Doin' It" (Melvin Ragin, Ray Parker, Jr.)
   A2. "People Music" (Herbie Hancock, Ragin, Paul Jackson)
   A3. "Cantaloupe Island" (Hancock)
   B1. "Spider" (Ragin, Hancock, Jackson)
   B2. "Gentle Thoughts" (Hancock, Ragin)
   B3. "Swamp Rat" (Jackson, Hancock, Ragin)
   B4. "Sansho Shima" (Bennie Maupin)

Herbie Hancock (key), Ray Parker Jr. (g),Wah Wah Watson (g), Paul Jackson (b), James Levi(ds), Kenneth Nash(per)

 

先週は殆ど丸ごと横浜・伊勢佐木に滞在していた。横浜滞在での楽しみは例によって関内のディスクユニオン滞在。ここはクラシックは少なくて、ジャズはまあまあ。という訳でジャズのLPアルバムを22枚も買ってしまった。といっても単価は500円/枚以下なのだけど。そのうちの3枚は金沢・泉野出町Galetasso(ガレタッソ)への開店2周年記念の進物なのだけど、自分がアソコで聴きたいLPレコードでもある。過去のブログで近所のバーと記載することが多い、通勤路まっただなかの酒場。今までうまくフィットした音を持ち込めていない感覚があった。だから案外に気合を入れて、お店の山盛りLPレコードのなかから選んできた。今度はあまりスベらない選盤かなあ。Herbie HancockのSecretsは、そのうちの一枚。

1970年代のジャズは、内部的にはMiles DavisのBitches Brew(1970)やChick CoreaのReturn to Forever(1972)などの電化サウンド(懐かしい表現、Fender Rhodesとel-bassが入ると..)がはじまり、所謂Fusionが隆盛したと云われている。ボクは1979年の聴き始めだけど、もうCrossover一色(当時Fusionはそのように云われていた)。今になって1960年代末のAtlanticサウンドを聴いていると、既にジャズとR&Bとの境界線で素敵なFusionが起こっていて、Miles Davis一門からみたジャズ進化論はちょっと違うのじゃないかなあ、と感じている。アレサ・フランクリンと演っていたキング・カーティスなんか聴いていると、そう思う。コーネル・デュプリーのギターが刻む音は格好がいいしね。

このハービー・ハンコックのSecrets(Columbia,1976)も、そんな時代のファンク路線モノ。ジャケットが時代の空気そのもので、まあ何とも懐かしい。当時のジャズのなかでは最もファンキーな路線を歩んでいたのがハンコック。Wah Wah Watsonが刻むリズムギターが楽しい。ハンコックのファンク路線の音楽は理知的な感じ、アレンジがしっかり入っていて、時折顔を覗かすジャズ色満点のピアニズム(電気ピアノにだってあるのだ)が何とも格好良くて痺れてしまうのだ。ちょっと作られすぎている感もあるのだけど。

1976年というと、前年まで熱狂的に進化を遂げたマイルス一派のFusionが一服したタイミングじゃなかろうか。1975年のマイルス・デイヴィスハービー・ハンコックの日本ツアーのライヴ録音(マイルスのアガルタ,パンゲア,ハービーの洪水)で、彼らのファンクが頂点まで達してしまったことは明らか。だから1976年にはマイルスは6年に渡る沈黙に入ってしまったし、Secrets以降のハービーはポップな路線に旋回していく。Weather Reportはジャコの加入を得てBlack MarketからHeavy Weatherへとポップな色を強めていく、そんな変換点。1976年のシーンを象徴するのは当時のニューポートジャズフェスティバルでのハービーの特別企画(VSOPに収録されている)。4ビートジャズを改めて取り上げ4ビートへの回帰への足がかりとなったし、同時にこのSecretsのようなファンクも取り上げている。この頃から進化論的なジャズの在り方から多様化へとヴェクターは変わったのじゃないかな。VSOP4面のファンク、Secretsのバンドなのだけど、を聴いていると、キング・カーティスのメンフィス・シチューのような感じで、彼らの目線の先が何をみていたか、しっかり感じてしまうのだ。

実はこの時期のファンクなハービーはとても好きで、LPレコード中心に集めている。もうだいぶんと揃ったような気がする。当時のシングル盤を集めたCDも楽しい。30年前はマジメなジャズファンだったので、ハンコックのファンクモノは毛嫌いしていたのだけど。30年遅れてファンクを聴くボクって何だろうか、と思うのだけどね。

相変わらずクラシックの音ばかり聴いている日々なのだけど、と云うか、日々だからジャズの楽しさが詰まった音が好きにになっている。1970年代のジャズになると、ついブログが長くなってしまう。ふう

(昨夜は雨で静かな夜だったので、コレを含めて3枚をゆっくりアソコで聴くことができた。ニキさん、ありがとう。3枚とも、あまりスベッていないと思うのだけど。また聴いてくださいまし。)