K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Chet Baker : Twilight Ennui

Chet Baker : Twilight Ennui (1983, Timeless/日本RVC)
   A1. Dolphin Dance
   A2. Ellen And David
   A3. Strollin'   
   B1. In Your Own Sweet Way
   B2. Mr. B   
   B3. Beatrice   
Chet Baker(tp), Michel Graillier(p), Ricardo Del Fra(b)
Monster, Holland, May 25, 1983

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最近入手したLPレコード。オランダTimeless原盤なのだけど、TimelessからはMr.Bというタイトルで出ている。RVCからの日本盤は、何故かオシャレな雰囲気を出しているのは不思議。Timeless盤のジャケットは味もそっけもない。実はこのLPも持っていて、聴いてみてアレマア状態。でも日本盤はやりすぎ。ヴィーナス盤ほどじゃないけど(あれは嫌いだ)。

いつ頃から、こんなにチェット・ベイカーを聴くようになったのだろうか?それもアムステルダムの屋上から落ちて落命する少し前のあたり、つまりボロボロ(の筈)の晩年の作品ばかり。別にそんな物語性を覗きながら聴いている訳じゃないのだけど。トランペットのトーンが落ち着いていて、そして無理矢理なアドリブもなくて、唄っていて唄う。よく考えると、トランペット一本で唄いきれるヒトって凄いと思う。ピアノとベースが邪魔ってことはないのだけど(むしろ好きな感じ)、居なくても成り立っているように思う。マイルスだって共演者を抜く演奏が想像できなくて、アンサンブル全体でマイルスを表現しているよね。だけどチェットは独りで唄いきっている感じ。欧州を徘徊していた旅芸人,のような世界なんだろうな。だから惹かれる。暖かみを求めるような哀感に。

このアルバムもそうなのだけど、ドラムレスの小編成が多く,うるさくない。だから冬の長い夜に何回も何回も聴いてしまうのだ。ゆっくりと抱かれるような音。映画 Let's Get Lostの一場面のように、オンナタラシの音にオトコのボクもタラサれているのは、何ともケッタイなのだけどね。


Chet Baker - Dolphin Dance

Dolphin Danceはハービーハンコックの曲で有名な処女航海で披露されたものだけど、ハバードの鋭いトランペットと対極の暖かいトーンで,別の曲のように感じてしまう。

こんな感じの曲がテキトーな感じで並んでいるのだけど、一つ一つが小さな光を放っていて、気持ちを少しだけ持って行かれる感じ,決して巻き込まれるようなモノじゃないのだけど。そう酒場の隅で演奏しているような程よさが気持ちいいのだ。

ピアノのMichel Graillierも好きなピアニストで、密やかに話かけてくるようなピアノがとても気持ちがくすぐられる。ボクの愛聽盤はSketchレーベルのSoft Talk。

Michel Graillier(p), Riccardo Del Fra(b) : Soft talk

ピアノとベースのデュオは大好物のおやつ。小腹が空いた夜中にそっと口に入れたくなる音。そしてこのSoft Talkのような小粋な小品をつくってしまう欧州の音楽風土がChet晩年の音楽を彩っているのだろうな、と思う。


Michel Graillier & Riccardo Del Fra - Nowhere