Duo Crommelynck:French Masterpieces for Piano Four Hands (1992, Claves)
1- 5. Ravel: Ma Mère LOye
6-17. Bizet: Jeux DEnfants
18-23. Fauré: Dolly
24-26. Messager: Trois Valses
27-31. Auric: Cinq Bagatelles
32-34. Poulenc: Sonate
35-37. Milhaud: Enfantines
Patrick Crommelynck, 桑田妙子
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大晦日の午後、凍った大気がシベリアから覆い被さっているとのことだ。このアルバムを聴いていると、年の瀬の空気のように冷たい感じが何だか気分にぴったりしている。
先日のロシアのデュオLyubov Bruk & Mark Taimanovのことをwebで調べていたら,Duoの破綻の原因は旦那の職業上の失策。本業のチェス世界選手権で米国選手に完膚なきまで叩きのめされた帰途、入国審査の無審査特権を剥奪されており鞄のなかから当時のソヴィエトご禁制のソルジェニーツインの小説が出てきたとのこと。そのため各種特権剥奪とチェス・ピアノ演奏禁止で困窮化、一家離散とのこと。なんだかボクが子供の頃のソヴィエト事情が懐かしく想い出された。もっとも当時の社会主義国家の自由抑圧が広く知られたのは案外最近だったけど。
このベルギー人と日本人のデュオDuo Crommelynckは1974年から1994年に活躍したピアノデュオ。このDuoはピアノフリークの師匠に教えてもらったもの。Lyubov Bruk & Mark Taimanovのところでも書いたけど,4手のピアノ曲の良さを知り、ちょぼちょぼ入手している。このDuo CrommelynckはスイスのClavesから出ていて、そんなに沢山は流通していないようだ。だからamazonでは時として法外な価格となっているけど、数ヶ月単位で観察していると常識的な値段になるときもあるので、そのような折に買い求めている。
その活動の終止符はwikiによると自裁。クラシックやジャズの演奏家の自裁は、あまり聞いたことがない(ジャズの場合は破滅的な生活態度であの世に召さ れる方は多いけど)。その事情はwikiの記載にはないが。そんなことが意識の奥底にあるのか、彼らの演奏からは温度の低さを感じ、儚い・浅い夢 のような印象を受ける。このフランスの現代曲集もフランス的な柔らかさよりも,陰翳を強く感じてしまう。そして何よりも美しいオトの連鎖。だからボクの好みに入ってきて、何回も繰り返して聴いている一枚になっている。多分に音以外のコンテクストにも影響は受けているのだろうけど。
ぼおっと音楽を聴きながら、こんなことを書いている年の瀬もなんだなあ、とも思うのだけど。そんな大晦日もあっていいかなあ,と思ったりするのだ。