K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Jazz会#13:弦ジャズへの誘い”ベースを中心に”


最近、特にベース奏者がリーダを務めるアルバムを買い求めることが多い。何故かボクにも分からない。だけど、ベースラインそのものに何かを求めていることには間違いない。クラシックを聴くようになってから、それもクラシック・ピアノを、稠密な音の配列による表現、に対する反対方向のベクトルに惹かれているのかもしれない。無音にもっとも近い楽器。ギターもそうだ。
今回は少しだけだけど、僅かではあるが短いジャズの歴史、その時間の流れを意識して音を紹介したい。

0.プロローグ
(1)Richard Bona:Tiki (2005)
アフリカのベーシスト。単なるベーシストの枠を飛び出し、ファンキイとは異なる落ち着いたアフリカの色をうたいあげている。ボクは大好き。

 

1.モダンジャズ創世記から弾いていたRay Brownを聴いてみよう。
(1)[LP] Oscar Peterson: At The Stratford Shakespearean Festival(1956,Verve)
Oscar Peterson (piano); Herb Ellis (guitar); Ray Brown (bass)
Blue NoteやECMがドイツ人による美学のレーベルとするならば、Verveはアメリカ興行師によるエンターテイメント以外の美学を持ち合わせていないレーベル。実にアメリカらしい。ハーブ・エリスレイ・ブラウンによるリズムの強さったら!

(2)[LP]Poll winners: Poll winners three! (1959, Contemporally)
Barney Kessel(g), Ray brown (b), Shelly Mann (ds)
このヒトは黒人なのだけど、西海岸の白人ジャズ、ハリウッドのスタディオ奏者が奏でたオトにも良く似合っていた。ダウン・ビート誌の人気投票(だったかな?)の各楽器首位の奏者が集まった企画録音。だからPoll winners。

(3)The Giants: Peterson, Brown, Pass(1974, Pablo)
Oscar Peterson(p), Ray Brown(b), Joe Pass(g)
これは興行師ノーマン・グランツが1960年にVerveをMGMへ売却後、1973年に入って作ったレーベル。フュージョンの時代に古い演奏家を集めたテキトーなセッションアルバムを乱発し(4〜5枚/月)、その無定見なプロデュースに結構呆れていたジャズ・ジャーナリズムだったのだけど、今となっては貴重な録音が多いように思える。時代なんて関係なかったヒト。レーベル名はピカソのこと。興行師の趣味は絵画収集だったのだ。それにしても饒舌なジャズ。

(4)Ray Brown: Something for Lester(1977, Contemporally)
Ray Brown(b), Cedar Walton(p), Elvin Jones(ds)
Contemporallyレーベルの創始者:Lester Koenig(彼もドイツ人じゃなかったか?)の逝去後の追悼アルバム。ベースがソロ楽器としての位置を確たるものにした後のアルバム。

2.Bill Evansの共演者の系列
(1)[LP]Bill Evans: Waltz for Debby(1961, Riverside)
Bill Evans(p), Scott Lafaro(b), Paul Motian(ds)
夭逝したScot LaFaroがベース。今となっては、良く聴く感じのベースなのだけど、この良く聴く感じを初めたヒトだと聞いております。

(2)[LP]Bill Evans:At The Montreux Jazz Festival(1968, Verve)
Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Jack DeJohnette (ds)
この頃のVerveはノーマン・グランツとは関係ない。最強のリズムセクション,デジョネットはこの後にマイルスバンド,を迎えたエヴァンスの強靱なプレイが聴ける。ベースも凄し!これが1970年代以降のある種のカタチじゃないかなあ。

(3)Montreux III(1975, Fantasy)
Bill Evans (p), Eddie Gomez (b)
デュオで聴いてみてください。ライヴの緊張感とともに会話の妙が。同じモントルーでの3枚目のアルバム。

(4)[LP]佐藤允彦(p) and Eddie Gomez(b):Chagall Blue (1980, CBS)
日本製作のデュオ。LP末期の美音を楽しんでください。2800円もした重量盤(って意味あったのかなあ)。佐藤允彦中山千夏昭和歌謡の会のカトちゃんは知っているよね、モト参議院議員)のモト亭主。慶大ジャズ研のサラブレッドだった奏者。ボクと顔がとても似ていると云われた!

(5)[LP]Bill Evans:The Paris concert(1978, Blue Note)
Bill Evans(p), Marc Johnson(b),Joe LaBarbera(ds)
死後発掘盤。この頃のエヴァンスは運指は衰えているが、ピアニズムの輝きは衰えていない、と思う。その最期のエヴァンスを支えたのが若いMarc Johnson。とても好きなベーシスト。

(6)Marc Johnson: Bass Desires(1985,ECM)
Marc Johnson(b), Bill Frisell(g), John Scofield(g), Peter Erskine(ds)
強者ギタリストを二本用意したMarcのバンド。ECMの音に仕立てられている。いきなり現代ジャスの音世界に。


(7)Marc Johnson: Sound Of Summer Running(1997,Verve)
Marc Johnson(b),Pat Metheny (g), Bill Friesel (g), Joey Baon (ds)
これも似たような構成なのだけどPatを聴かせたくて...ヘンなほうがBill Friesel。


(8)Fred Hersch: Horizons (1985, Concord)
Fred Hersch(p), Marc Johnson(b), Joey Baon (ds)
最近とても好きになったピアニスト。

 

3.Weather Reportの系列のベーシストを少々
1971年から1986年まで活動した電気ジャズ・フュージョンバンド。Joe ZawinulWayne ShorterMiles Davisのバンドを脱退後に結成。ジャズ進化をMiles Davisとともに牽引。ベーシストの変化がそのまま音の方向性の変化になっている。
(1)[LP]Weather Report: Weather Report(1971,Columbia)
Wayne Shorter(ss), Joe Zawinul(Key), Miroslav Vitous(b), Alphonze Mouzon(ds, Voice), Airto Moreira(per), Burbara Burton(per)
チェコ出身の Miroslav Vitousはボクが好きなベーシスト。バンドが幻想的な音を求めていた方向性に良く一致。

(2)Live & Unreleased (1975,Columbia)
Wayne Shorter(ss), Joe Zawinul(Key), Alphonso Johnson(b), Leon "Ndugu" Chancler(ds), Alyrio Lima(perc)
よりpopでfunkの方向に転換。ベースは黒人の Alphonso Johnsonに交替。バンド解散後に公式発売(2000年頃)されたアルバム.。躍動するAlphonso Johnsonが良く捉えられている。1975年はMilesのFunkが最も過激化した年。


(3)[LP] Heavy Weather
Wayne Shorter(ss), Joe Zawinul(Key), Jaco Pastorius(b),Alex Acuña(ds), Manolo Badrena(perc)
Jacoの加入でFunk色が薄れ,POPで刺激的な音に変化。空前の人気を得る。Jacoはフレットレス・ベースを初めて演奏。その独自の音がベース奏法に大きな影響を与えた。しかし麻薬禍のために絶頂期は短く、早々に姿を消してしまった。

(4)Jaco Patorious (1976, Epic)
Jaco Patorious (b), Herbie Hancock(key), Don Alias(perc)ほか
Jacoの初リーダ作。Weather Report加入前に自己のスタイルを確立している。

(5)Pat Metheny: Bright Size Life (1975, ECM)
Pat Metheny(g),Jaco Patorious (b),Bob Mozes(ds)
Pat Methenyの初リーダ作。Jaco Patoriousとともに織りなす音はECMサウンドそのもの。美しい弦の音。このJacoは時間を遡る程よくなるような錯覚を与える。


Weather ReportのベーシストはVictor Bailyに代わるのだけど、印象がないので取り上げない!

4.あと少々幾つか、エピローグ代わりに
(1)Pat Metheny: One quiet night(2003)
Pat Metheny(g)のソロアルバム。おなじみの美しい曲をギターソロで。

(2)Anouar Brahem: Astrakan Cafe(2001, ECM)
Barbaros Erkose ( Clarinet ), Anouar Brahem ( Oud ), Lassad Hosni ( Darbouka )
民族楽器を使ったECMの音。黒海北からアラル海東方に至るステップ地帯の彷徨をイメージされている。

(3)Carlos Aguirre: disco rojo(2004)
アルゼンチンのアギューレでお仕舞い。お休みなさい