K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

武田和命:Gentle November (1979) :黄昏たら(なくてもいいけど)黙って聴く一枚

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武田和命:Gentle November(Frasco, 1979)
A1. Soul Trane
A2. Theme For Ernie
A3. Aisha
A4. It's Easy To Remember
B1. Once I Talked
B2. Our Days
B3. Little Dream
B4. Gentle November
武田和命(ts), 山下洋輔(p), 国仲勝男(b),森山威男(ds)
1979年9月 坂戸市民会館での録音(観客なし,スタジオとして利用)

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一年ほど前に千葉・稲毛にあるCANDYに出かけた。有名なジャズスポットであるから、だけではなくて、国仲勝男(g)、林栄一(as)、小山彰太(ds)のセッションがあったから。勿論、そのことだけに地方から出かける時間的・金銭的な余裕はあろう筈はない。仕事でシンガポール・タイへ行かねばならなくて、安いスワンナプーン乗り継ぎのフライトが朝発。だから千葉で一泊せねばならない旅程になってしまった。そのタイミングで奇跡的に遭遇した訳。何が奇跡的 な感覚かというと、1980年過ぎに新宿ピットイン他で随分聴きに行った山下洋輔トリオ最末期の奏者,ゲスト奏者達だから。特に国仲勝男は沖縄に引っ込んで拝み屋(と記事で読んだことがある)やって20年以上経っていたんじゃないかな?だから、聴いていて30年近い時間が凝縮したような感覚に打たれた。そんな刻を過ごしながら脳裏に浮かんだり、消えたりしていたのはテナー・サックスの武田和命。同じく山下洋輔トリオ最末期のゲスト奏者。

ボクが彼をはじめて観た・聴いたのは1979年の夏だと思う。オールナイトの琵琶湖ジャズフェスティバル。山下洋輔トリオのジャズ的演出、前衛的とみせかけた鋭角的な音塊が全体で単純なドライブ感を演出していく様、がボクは好きだった。案外単純にある種のジャズのグルーヴを感じることができたから。だけどゲスト出演の武田和命の良さはちっともわからなかった。そのドライヴ感から外れ、ウネウネとフリーキーな音を連ねていて、キレが悪く、ドライヴはしなかったから。なんで彼が出るのか、ボクにはわからなかった。

大いに見直したのがFM放送されたゴールデン・ライヴ・ステージでのカルテットでの演奏Gentle November。国仲勝男のデビュー盤「暖流」発売記念。国仲もいいのだけど、とても正統的なバラード演奏での武田和命は光っていた。やはり正統的なジャズ・プレイでの山下洋輔の控えめなプレイもよかった。

これは、そんな武田和命のバラードを集めたアルバム。やはり1979年に録音されたもので、1989年に49才で亡くなった彼のアルバム。バラードのアルバムを聴いていると、過剰な情感で暑苦しくなることが少なからずあるのだけど、素っ気ないくらい淡々と、でもよく聴くと深い哀感に胸を打たれるような瞬間が時としてある。ヒトの抱えているイロイロな情感に対し覚めたような距離感があるのだけど、それを暖かく見ているような音の感覚。老境の諦念が生む優しさのような。演奏しているとき,彼は40才なのだけどね。その特異な楽歴(順調なスタートから突如姿を消し、10年くらいキャバレーで歌伴)の故だろうか。彼の亡くなった齢も過ぎてしまって改めて聴く今もそう感じる。

 

追記:ブログ検索をすると実に多くの方々、ボクと同世代(あるいは少し上)の方々にこのアルバムが取り上げられていることに気がついた。録音もいいし、山下トリオのバックもとてもいい。好きな表現ではないのだけど、「日本ジャズの名盤」と云ってもいいのではないかと思う。

 

ジェントル・ノヴェンバー

ジェントル・ノヴェンバー

  • アーティスト: 武田和命,山下洋輔,国仲勝男,森山威男
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2009/06/24
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