K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Fazal Say: Black Earth

  イキがって、ハノイバンコク・金沢・イスタンブールと云ってみても、疲れを感じてしまっている。夕食にケバブを食べた後、繁華街を歩いてみたのだけど(CD屋でコーランを買った)、早い時間から全てのことに満腹感を感じてしまった。

  そんなことで、海峡の夜景を見ながら、夜風に吹かれながら、ぼおっと過ごす時間が快適。 そのときに聴いたのがトルコ人ピアニストのファジル・サイの自作自演曲Black Earth。

  サイは、昨年、金沢にも来ていて、弾け飛ぶような演奏をしていた。聴き初めだったのでdifferentiationは分からなかったのだけど。アンコール(だったかな?)でのBlack Earth。陽気(に見える)サイの指先から、暗い淵が開いたような音に引き込まれた。昔見たアナトリアの乾いた大地が想起された。そのアナトリアの果てが海に落ちる崖を眼前に見ながら、聴いてみた。欧州とアジアが作り出す破断線を明瞭に描き出しているように感じた。欧州的な楽器でつま弾く音。

  Black Earthは、トルコ語でKara Toprak。Karaは黒。中国・宋の時代にモンゴルに出来た契丹(遼)が女真族に滅ぼされて西遷したときに今のキルギスできた国が西遼。カラ・キタイと呼ばれた。これは黒い契丹人という意味。1000年前の中国西方の言葉からさして変わっていないことに気がついた。ちなみに、契丹人・キタイはロシア語の中国人・キタイスキーの語源らしい。そんな眼の前のアナトリアから数千km向こうの大地で繰り広げられた遊牧民の物語を思いだしながら、浅い覚醒のなかで夜は更けていった。