Elina Duniのことを書いていて、インスタンブルールのCDショップで入手したTrio Tzaneを思い出した。仏Naiveから出ているので、独ECM同様、聴き手が欲しがっている「適度なオリエンタリズム」への「調整」がされている、と思う。どんぴしゃ。久しぶりに聴いたが、やはりいい。時流の外、なので時間軸の影響を全く受けない、のである。
apple musicとyoutubeを見つけたので貼り付けておく。
それにしても、このアルバムを入手したイスタンブールへ行ったのは5年前。もう何だか随分遠くになってしまったように思える。
[2011-8-23記事]
Trio Tzane: Gaitani(2010, Naive)
1. Snoshti Sedenki Kladohme
2. El ediyi (uzun hava) Siy¢h per§emlerin
3. Militsa
4. Ipne pou pernis ta pedia (berceuse)
5. Nev¢ il¢hi - Can yine blbl oldu
6. Mirologue de la vierge, I
7. Mirologue de la vierge, II
8. Zoro le, Zoro - Tragnali momi nevesti
9. Tzane Potame
10. Bir evler yaptrdm
11. Shopska Kitka: Lepa Yano & Yana ovchar lagala
12. Suite
http://www.myspace.com/triotzane で試聴可能
Sandrine Monlezun :パリ生まれのフランス人
http://www.myspace.com/sandrinemonlezun
Gülay Hacer Toruk : イスタンブール生まれのトルコ人
http://www.myspace.com/hacertoruk
Xanthoula Dakovanou : アテネ生まれでタシケント(中央アジア)で育ったギリシャ女性
http://www.myspace.com/xanthouladakovanou
混沌とアジアとヨーロッパが放り込まれた街イスタンブール。トプカプ宮殿やらアヤ・ソフィアなどの主要建造物が並ぶ旧市街から、金角湾を挟んだ対面が新市街。ボクが滞在していたのは、新市街の丘のうえにあるタクシム。それなりに洗練された落ち着いた街並で気分が良い日々を過ごした。といっても5日ばかりなのだけど。そのタキシムから金角湾にかかるガラタ橋まで転げるような急坂になっていて、その坂には古ぼけた路面電車が走っている。短い沿線には洒落たブティックやレストランが並んでいる。といっても欧州の下町のような雰囲気で溢れているのだけど。欧州の行き止まり、場末のような空気であり、またアジアへの開かれた窓のような不思議な空気に満ちている。
そんなタキシムの通りにレコード屋があった。ボクが好きなECMコーナーまである本格派。壁にはキース・ジャレットのケルン・コンサートのLPレコードまで飾ってあった。前滞在地のバンコクではCD屋に遭遇することはなかったので、とても嬉しくなった。以前、カセット・テープで持っていたのだけどCDでは持っていなかったコーランを求めたり、ジャケットを見て、良さそうなCDを求めたりした。
このTrio Tzaneという女性3人グループのGaitaniはそんな一枚。買ってから分かったのだけど、仏Naiveレーベルの一枚。一曲目Snoshti Sedenki Kladohmeは、ブルガリアン・ヴォイスと似たような曲想。非西洋的な東方音楽の玉手箱のようなCD。声量や技量はやや不安定な印象があって、歌唱力で圧倒するようなグループではない。ただ曲の選定や、曲が持っている東方の空気、それも西方から見える東方の空気をよく表していて、窓辺からささやかに吹き込むような淡い感じが気持ちよい。
パリで結成されたフランス人、トルコ人、ギリシャ人のグループなので、民族音楽が持つある種のクセが消え、淡いエキゾティシズムが汎世界的な香りを与えているのだろう。ブリジット・フォンティーヌの音楽と通底する世界のように感じる。
なんとなく山勘でこのCDを掴んできた事がとても嬉しくて、そんなつまらない事に鼻をふくらませているここ数日なのだ。無論、独り暮らしだから膨らんだ鼻は誰にも見えないのだけどね。