K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

今、アルゼンチンの音が気になる:かぜ、ひかり、みず、そんな言葉とともに(1)


 ここ暫くアルゼンチンの音楽家が奏でる音に惹き付けられている。自分でも呆れる勢いで音を集めている。

 何がいいのか?上手く云えないのだけど、透明度の高い大気や波立つ水面に射しこむ光をみるような、感じ。そして人肌よりやや冷たい温度感の音造り。時間を静かに遡行し、気がつくと自分で忘れてしまっていた古い記憶のなかに連れて行かれる。そうノスタルジイをゆっくりと喚起するような旋律。決して昂ぶらない。かぜ、ひかり、みず、そんな言葉とともに聴いている。


 金澤に引越してきてから暫くして、ネット情報でカルロス・アギューレを知ってから一気に火がついた。金澤で暮らしているなかでの心象風景としっかり共鳴しているように感じる。微温のラテン音楽と金澤は合うのか?

 まとめる過程で気がついたのは、改めてブラジル音楽の偉大さ。アルゼンチンの奏者のなかに彼らの光跡をみつけ、嬉しくなってしまうのだ。ミルトン・ナシメントの透明な美声、トニーニョ・オルタの暖かさ、ジョアン・ジルベルトのシニカルな味わい、そして何よりもエグベルト・ジスモンチの天蓋から落ちてくる光の破片のような音、エルミート・パスコアールの真にradicalな音の再構築。あわせて、ジスモンチの「微温のブラジル音楽」を造り出したECMまで見えてしまう。
 
 ボク自身の備忘の意味もあり、聴きはじめから時系列で聴いているアルゼンチンの奏者を並べていきたい。これをもとに「南米音楽メニュー」を作ろうと思っている。
 
 まずは昨年の夏頃までに聴いた奏者を紹介したい。

1.Carlos Aguirre  http://carlosaguirre.com.ar/
 サイトを開くと分かるのだけど、微温の柔らかな印象。カルロス・アギューレは初期のパット・メセニー・グループに通ずる。淡いフォークロアの薫りを漂わせながら、透明度の高い音を精緻に組み立てている。ピアノも弾くし、ギターも弾く。声も美しい。
 Shagrada Medraレーベルを主宰していて、少し集めてみようかと思っている。
 Disc Rojo(2004), Crema (2006), Violeta     (2008)のいずれも良い。Disc Rojoが一番フォルクローレ的でやや温度が高いが爽やか。近作ほど、音が抽象的になっているように感じる。またこれらの原盤のジャケットは水彩や切り紙が手作り。パッケージそのものがクラフト・ワークの楽しさに溢れている。またチリ人歌手Francesca AncarolaとのデュオArrullos(2008)も楽しい。

Crema(2006)より   

Francesca AncarolaとのデュオArrullos(2008)より


2.Silvia Iriondo
 amazonをみていて、ジスモンチ・プロデュースという言葉に負けてクリック。しかも欧州ではECMから発売と聞いて、それはもう大期待。2005年のTierra Que Anda。予想と違わず、素晴らしかった。哀感胸を衝く、ような音楽。パンパを流れ行くヒトの景色が見える。続けて、2006年 Ojos Negros、2010年 Ojos Negrosと入手。最初の惹き付けが強くて、後続の印象がやや弱いことが残念。編成が大きいこともあるように思える。音の純度がちょっぴり落ちているのだ。勿論、どれも聴く価値はあるのだけど。

Tierra Que Anda(2005)より


3.Sebastian Macchi
 セバスチャン・マッキはアギューレ一派だそうで。だからアギューレの音世界と重畳した透明度の高い音楽をやっている。Claudio Bolzani, Fernando Silvaらと2005年にLuz De Aguaを出していて、これが素晴らしい。彼らは声が綺麗で、しかも流れるように唄うので気持ちが良い。

Luz De Agua(2005)より


 
4.Aca Seca Trio
 アンドレス・ベエウサエルト(key,vo)、フアン・キンテーロ(gu,vo)、マリアノ・カンテーロ(ds,per,vo)の3人組。2003年の一枚目のアルバムAca Seca Trioを聴いている。ややジャズに近いか。音の透明度は薄れているが、過度に耽美的でなく、温度はそんなに上がり過ぎていない。この手の音楽は熱くなると、臭くてもう聴けない。だから絶妙なところで音ができている。楽しい音楽。

Aca Seca Trio(2003)より


5.Puente Celeste http://www.puenteceleste.com/
 5人組のグループ・プエンテ・セレステエドガルド・カルドーゾ(vo, g)、サンチアゴバスケス(ds,perc)、マルセロ・モギレフスキー(fl, harmonica, cl) 、ルーカス・ニコティアン(p. acc) 、ルチアーノ・ディセンチャウス(b)の5人組。大分前にアライ君に教えてもらったSera Una Nocheのパーカッション奏者サンチアゴバスケスが作ったグループ。同じグループでもAca Secaよりややジャズ寄りなのだけど、音の透明度は高い。こちらのほうが好みに近い。2009年のCancionesを聴いているのだけど、もう少し欲しくなっている。やれやれ。

Canciones(2009)より



あとは、次回。といっても、暫く出張なので、間が空きます。