K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Ralph Towner: Time line (2006) ヒトが去り・ヒトが来る

 今朝、弱い雨脚のなか、温い風に吹かれながら坂をくだった。もう何が何だか分からないような、無我夢中で日々を過ごす経験なんて何年振りだろう。春の嵐のような出来事をつぎつぎと振り落としているうちに、3月も半ばが過ぎてしまって悄然としている。そんな日々に区切りをつける間もなく、ホームに滑り込んだ列車に乗り込んだ。

 低い雨雲のなか煙る山並みをゆっくりと見ながら考えていた。随分と昔に学校を出てから、3月はヒトが去り・ヒトが来る時候で、本当に随分と多くのヒトと交差してきた。そして今春も同じ。随分多くの仕事仲間と別れ、そして多くの仲間がやってきた。その繰り返し。

 だからそれが何なんだ、と繰り返し繰り返し考えているのだけど、時間の軌跡のようにヒトが記憶のなかの点景になっているだけのようにも思える。そして自分も他人の記憶の点景になっているのだろうか。

 そんな無意味だけど、無価値とは言い切れないような思考。時間の流れを遡行するという意味で、極めて私的なノスタルジイのなかに放り込まれる。ラルフ・タウナーの比較的近年の作品であるTime lineを聴いていると、そんな記憶を辿るような感触が弦の音のなかに宿っているように思える。

 昔の作品"Diary"も30年を経た"Time line"を聴いても、そこはかとない記憶の旅に連れて行かれる。Diaryはヒトの共有智たる歴史のようなものを振り返り、古の空気を紡ぎ出すような音。そこには若者が持つ偉大な過去への憧憬が投影されている。Time lineから受ける印象はもっと私的であり、我が掌からこぼれてしまったものを愛しむような音。北陸線の列車のなかでTime lineを聴いていると、やはりそんな手慰みのようなイメエジが喚起されて、笑ってしまった。

 それにしても、最近のSNSで使われるTime lineの感触って、見えざる記憶を顕在化させるような気持ち悪さがあるのだけど、如何ですか?

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Ralph Towner: Time line (2006,ECM)
   1. The Pendant
   2. Oleander Etude
   3. Always By Your Side
   4. The Hollows
   5. Anniversary Song
   6. If
   7. Five Glimpses l
   8. Five Glimpses ll
   9. Five Glimpses lll
  10. Five Glimpses lV
  11. Five Glimpses V
  12. The Lizards Of Eraclea
  13. Turning Of The Leaves
  14. Come Rain Or Come Shine
  15. Freeze Frame
  16. My Man's Gone Now
Ralph Towner guitar solo