K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

鈴木勲・菅野邦彦:Sincerely yours (1980) 30cmの豊饒な音の缶詰


 困ったことに、新しいスピーカを入れてから、音に取り憑かれたような日々。明け方に、ピアノが響くスピーカの前で倒れている自分を発見するような日々。疲れ果てるまで聴いているようなのだ。困った。廃人に成りかねないね、こりゃ。

 あれ、これ、気になって、音源を聴き続けているのだけど、1970年代から1980年代のLPレコードって音がいいなあ、と改めて思った。不思議なことに、クラシックについては、そう思わないのだけど。ジャズやポップスはそんな気がする。なぜだろう。とりわけ、LPレコード終末期の76cm/sec録音のものは、とても気持ちに合うような柔らかく美しい音だと思う。キング・レコードのジャズレーベルであったPaddle Wheelには、そんな素敵な音がするLPレコードが沢山あったような気がする。

 この鈴木勲と菅野邦彦のデュオは、そんな美音の一枚。何よりも演奏がいい。びっくりするようなことは何もしていないのだけど、驚くほど日本の音。我らが同胞のジャズがごく自然に奏でられる、そんな感じなのだ。最近聴いた渋谷毅と川端民生のデュオもよかったけど、この鈴木勲と菅野邦彦のデュオもいい。とても良くスイングするしね。30cmの豊饒な音の缶詰に掴まれた。

 そんな音に耽溺する生活に一週間足らずで疲れ果てたので、自室から暫く逃げ出します。南のほうで数日、ぼーっとしてきます。

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鈴木勲・菅野邦彦:Sincerely yours (1980, Paddle Wheel)
   A1. Mean To Me
   A2. The Midnight Sun Will Never Set
   A3. Moon River 
   B1. Autumn In New York    
   B2. I'm Getting Sentimental Over You
   B3. The Very Thought Of You   
   B4. Goodbye        
鈴木勲(b), 菅野邦彦(p)