K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

この地の梅雨の候


 今宵、所用で出かけた関西から帰ってきた。金沢駅に降り立つと、大気はやや冷たく、湿気をたっぷり孕んでいた。駅舎を出て歩くと、右手頭上が賑やかしい。案の定、半月が煌々としていた。大気圏の湿気でゆらゆらとしていたが。

 この地の梅雨の候は好きだ。前線から随分北上していて、雨があまり降らない。冬の間、降雪で閉じ込められた時間を、この時候に取り返すような感覚がある。明るい。

 この暫く、音に耽溺して月の光に気がつくことがなかったのだけど、ここのところ、ステレオセットの向こうから窓越しに覗かれていることに気がついた。ゆらゆら浮かんでいる。気がつかない振りをして、LPレコードが終わったところで、顔を向けてみたら、もうそこにはなかった。

 随分と年嵩になってから、足穂のような気分になっているもんだ。