本当は休日である昨日も今日も、朝から仕事場に出ている。あまり嬉しいことではないのだけど、好きな音を流しながらゆっくりと考え事をしている時間は嫌いじゃない。窓の外の雨の気配を感じながら、時折ぼんやりしている。
ある時期・秋から冬にかけて、随分とアルゼンチンのネオ・フォルクローレとも云うべき音楽に熱を上げた。はじめて聴く音なのだけど、少し古いフィルムをみるような、懐かしいように感じることがあるから。それにフィルクローレ固有の臭いが綺麗に濾過されて、ジャズを中心とした汎世界的な音のプラットフォームにしっかりと乗せられている。薫りたつような音世界。暖かくなってからは、あまり聴いていなかったのだけど。
静かな雨の日曜日に独り仕事場にいると、久しぶりに聴きたくなった。取り出したのはシルヴィア・イリオンドの近作。シルヴィアの声は透明で低い温度の音世界。それに最小限の打楽器などが加わる。音と音の隙間が、静謐な空間を主張している。雨の日に聴くには具合がよい。時折はいる効果音(路地の向こうから漏れ聴こえるような声、古いラジオの雑音交じりの音)もノスタルジイの記憶を駆り立てる。すっかり仕事場でまったりしてしまった。紫陽花の候にぴったりの南米音楽とは変な感じだけど。
そんな流れ出る静謐な音の行方は何処だろうか、とふと思ってしまった。
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Silvia Iriondo: Mujeres Argentinas(2010, EPSA MUSIC)
1. Gringa Chaquena
2. Juana Azurduy
3. Rosarito Vera
4. Dorotea La Cautiva
5. En Casa De Mariquita
6. Alfonsina Y El Mar
7. Manuela La Tucumana
8. Las Cartas De Guadalupe