この数年、8月にバンコクへやって来る。鬱陶しい雨季も終わった爽やかな季節。夏の熱帯って辛いと思われるのだけど、バンコクの夏は日本よりずっと快適。最高気温30度、夜半過ぎには25度位。避暑と云っても良い。
今回のバンコクはまだ雨季。晴れ間がときどき。雨もときどき。晴れぬ空を眺める朝。雲をみるのが好きだから、飽きずに眺め続けている。なんか大好きな秋空を眺めにバンコクに来たみたい。
ある日のこと、黒雲が沸き上がるのを眺めていた。そのうち、眠りに落ちていた。浅い午睡から、窓を叩く仄かな音で覚めた。 鈍い硝子越しにみる街は冷えきっていた。 凝固した水蒸気が落ちた後の出来事。
そんな曖昧な天候のなかで、ぼんやりと過ごす日々なのだけど、仕事先に向かって歩いていたら、音を立てて雲が割れていくような大気の変化があった。目の前の樹々が浮かび上がってきた。その光を受けて気配が濃厚となった樹々の息づかいを感じてしまった。なんとなく嬉しくなってしまった。暑く、額に浮かび上がった汗を拭った。