K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

ベトナム・フエ:炎天下の空を見上げると


 もうベトナムから帰国して暫し時が経つのだけど、バンコクと比べた暑さの記憶が、日本の暑さのなかで随分と薄まっている。それでも、フエの遺跡のなかを何時間か歩いた記憶は強烈で、ときどき、あのときに見た空のことを思い出す。

 ベトナムについて大きな印象となっているのは、未だ共産党の指導下にある国であることを視覚的に感じたこと。北京では天安門以外でそんなことを感じなかったのだけど。雨季の雲が沸き上がる中、フエの城壁には大きな赤旗が翻っていた。その光景がとても良くて、いつまでも眺めていたい気分だった。

 ボクはダナンで話をしたベトナム人は年下が多かった。だから、ベトナム戦争以降の生まれ。なんか不思議な感じで、ダナンの米空軍基地陥落を伝える記事を読んだことを思い出した。その後の将棋倒しのような南政権の崩壊。そんなことも遠い昔なのだけど、天姥寺には焼身自殺で当時の南大統領ゴ・ジェムに抗議した僧侶に関する展示があって、それだけが当時を伝えていた。天姥寺の横の香江のうえには、そんなこととは関係なくゆったりと雲が流れていた。

 フエの街は、随分と昔から気になっていて、一度行ってみたかった。入って少し経ったら、それがあまり嬉しいことでない、ことに気がついた。ベトナムは小中華の世界。紫禁城のミニチュアを作り上げている。40度近い炎天下のもと、既視感があるような建物をみるような感じって、如何なものか。礼服までそっくり。ただ哀しいのは、規模が小さい事。祭壇の前の広場も狭い。偽物で矮小、って少し哀しい。ボクが去年、ハノイで感じた違和感は中国っぽいところ。その違和感が展開されている街フエ。

 流れ落ちる汗を拭いながら、しまったなあと、空を仰ぐようなフエ滞在記だった。だから、帰途、遠くにダナンが見えると、何となく穏やかな感じにほっとしたのは、そんな感覚があったから。