K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

インド・Taj Mahal:心震わせる白亜のモスレム建築


 仕事の後、帰国の深夜便まで時間がある。その時間を使って、ありきたりなのだけど一度は行きたかった観光地タージ・マハルへ行く事にした。仕事仲間でマイクロバスに乗って、アグラへ。ニューデリーから4時間。デリーを抜け出るのに1時間、高速2時間、アグラを徘徊して1時間。あらゆるもの、自転車、バイク、トゥクトゥク、牛、馬車あらゆるものが行き交う市街地のなかは時間がかかる。朝食後すぐに出たのだけど、アゴラの昼食場所に着いたのが12時過ぎだった。土埃と家畜の臭いで蒸せかえる路上から、扉一枚で美しいホテルのなかへ。ロビーから、タージ・マハルが見えて息を呑んだ。高い陽のもと、白く輝いている、ように見えた。ウッツイ美術館でボッティチェリの絵をみたときと同じような感覚。素人ながらオウラが見えるような感じ。暗いロービーの向こうに見える白いドームにすっかり惹かれてしまった。なんとなく感性が摩耗したような(そんなに驚くことがない)日々なので、思わぬ感触だった。

 全大理石の外観の状態がよく、白く輝いている。そこに異なる色の大理石をはめ込み、イスラム固有の抽象的な文様とアラビア習字のコーランが。建物自体が壮麗で、そこに軽くアクセントをつけた装飾なのだけど、よくみると凝っていて、凄みがあった。 細部に神が宿り、そしてその全てが神を語るような。

 かつてバイカル湖の南にモンゴル族がいて、欧亜を跨ぐ大帝国を築いた。その帝国が四散した後、中央アジアから小アジアまでも再統一したのはモンゴル・チンギス・ハーンの末裔でモスレム化したモンゴル、チムール。さらにその帝国が失われた後、チムールの末裔バーブルの一族はサマルカンドからステップ地帯を南下してその南縁である北インドムガール朝を築いた。だからムガールはモスレム化したモンゴル(杉山正明氏の著作を読んでみてください)。その文化は隣国ペルシャの影響が大きいという。

 昨年出かけたイスタンブールオスマン朝はトルコ(チュルク)人の国。元来はモンゴルと同じバイカル湖の南。モンゴルに押し出されて西遷していった歴史がある。そしてその文化的土壌の一つには、ムガールと同様ペルシャ。だから、イスタンブールで見た壮麗なモスクと基本的には似た印象。簡素にして美しい。壮麗にして静寂。巨大な造形と細部の美しさ。タージ・マハルは、その簡素な美しさを純化し、極めたような凄みがあった。そして、夕刻に近づき、光が紅を孕みつつあるとき、その姿が放つ光が移ろう姿から眼が離せなかった。話には聴いていた月夜の美しさ、がとてもリアルに感じた。見たい、と思った。

 あとは写真を。細部が多いのだけど、細部抜きに全景は語れないように思ったので。単調な文様の果てしない繰り返し。その単調さ、の一つ一つは玉のような光を放ち、それを束ねていくとき、僅かな差異が放つスペクトラムのうねり、のようなものが語る。ミニマル音楽を視覚的に表したような印象だった。

正面の門の外観と早速現れた唐草模様

正門から仰ぎ見るドーム

いささか観光写真ですが

アラビア書道によるコーランと唐草模様

唐草模様の拡大

アラビア書道によるコーランとその拡大

透かし彫り

正門への回廊。単調な繰り返しが描く美しさ。