驚いた。新譜じゃないのだけど、今年手にしたCDのなかで抜きん出た1枚ではなかろうか。圧倒的な音の存在感、美しいという言葉では語り尽くせない美しさ。内的な官能性がとても高く、気持ちの奥底から揺さぶられ、音が終わった後、自らの周囲がまったくの空っぽの空間になってしまう。これはジャズとかブラックミュージックとか、身体性から官能を得る音楽とは全く異なる快楽。甘い刺激が強い。
Arrauが逝去した年の録音、89歳の演奏。この録音の後に亡くなっている。確かに、この世とあの世を繋ぐような甘さ。天上から降り注ぐ光のような音。
随分と前からクラシック音楽の参考にしているブログで知っていたのだけど高価で手が出なかった。HMVで安価に出ていることが分かって、エマールの新譜(これもドビュッシー集を含めた近年の何枚か)とあわせて入手。3枚組なのだけど、3枚目の録音が一番新しくて、驚かされたもの。本当にタンノイのスピーカを買ってよかったと思う。とてもゆっくりとした演奏で、音と音の隙間を聴かせるような感じ。その隙間に流れるピアノの響きの蠱惑的な音。
昨年も、一昨年も秋頃からクラシックをよく聴いていたのだけど、今年はなんだかそんな気分ではなかった。アラレやミゾレが降り出す候になって、ようやく今年もそんな気分になってきた。
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Claudio Arrau: Debussy集/Suite Bergamasque他(1991,DECCA)
1. Suite Bergamasque
2. Pour Le Piano : Sarabande
3. La Plus Que Lente : Valse
4. Valse Romantique
3枚組の3枚目。ほかの2枚は録音時期が異なる。この年の録音を集めたThe final recordings(7枚組)もあるようで、欲しくなってしまった。やれやれ