K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Jan Garbarek/Egberto Gismonti/Charlie Haden: Carta de Amor (1980) 大気の緩みのような

  あちらこちらのブログにも、その率直な驚きが綴られているが、最近のECMの古い音源の出版には驚いてしまう。未発表も初CD化も。嬉しい反面、アイヒャーが何を急いでいるのか、そんな朧げな不安がある。レスター・ケーニッヒとともにお仕舞になったコンテンポラリーの(ような)ことが頭をよぎるのはボクだけじゃないだろう。

 このアルバムもそんな驚きのひとつ。1980年頃に出た「Magico」のライヴ音源。テキサスに来てから、これも案外聴いている。iPODを小型スピーカにつないで、本を読みながら、ビール片手に聴いている。冬のアリゾナは避寒地として有名で、テキサスも若干寒いのだけど、大気の緩みのような爽やかさを感じることが多く、そんな隙間に音が入り込むような感触が楽しい。

 1979年当時「シンポ的」なオトに憧れていたボクはヘイデンのベースが好きだった。ドライヴするのでなく、訥々とした語り口には幾つかのパターンがあり、民族楽器の弦を叩くような感触に痺れていた。そのメッセージ性には1970年代の前衛性の残滓がフリカケのようにかかっていたしね。ゲバラとか、サンディニスタとかがね。ただそんな頭の大きさと音自体のワンパターン感に飽きてしまったのだけど。でも、時として美しい音を奏でる、そんなベース奏者。

 アルバムMagicoについていうと、30年前、あのヘイデンなので期待して買った。聴いてみると、生硬な感じがあって、あまり好きになれなかった。特にガルバレクにそれを感じた記憶がある。未だに、ガルバレクで良さを感じることは、そんなに多くはないからね。ドレスデンはとても例外。だから、B面のsilenceの曲の美しさ、以外は記憶に残っていなかった。

 ジスモンチが気になっているこの頃なので、Carta de Amorを聴いてみたのだけど、思いのほか良い。生硬な感じはなくて、ライヴが微妙に緩い感じを作っている。音の温度も少し高い。だから冬のテキサスで聴くと、緩んだ音が気持ちよく感じる。ジスモンチの素晴らしさを改めて思い知らされるようなアルバムで、インタープレイの妙、には耳が行かない。だから録音当時には蔵入りになったように思えた、ボクには。

  そんなところに30年間の封印を想像したのだけど、どうだろうか。

 

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Jan Garbarek/Egberto Gismonti/Charlie Haden: Carta de Amor (1980,ECM)
1-1. Carta de Amor
1-2. La Pasionaria
1-3. Cego Aderaldo
1-4. Folk Song
1-5. Don Quixote
1-6. Spor
2-1. Branquinho
2-2. All That Is Beautiful
2-3. Palhaço
2-4. Two Folk Songs
2-5. Carta de Amor
Jan Garbarek(ts), Egberto Gismonti(g,p), Charlie Haden(b)