K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

渡辺貞夫:Pastoral (1969) 1970年代の日本ジャズを遡行すると


 昨日届いたLPレコード。聴いて驚いた。すごくいい。1969年の吹き込みだけど、ボクが好きな70年代日本ジャズの息吹が濃厚。1970年代の日本ジャズを遡行すると、このあたりに来るのかな、と思った。

 1970年代末のカルフォルニアシャワーで広く浸透し、当時、男性化粧品の宣伝まで出ていた渡辺貞夫なのだけど、あのグルーシンとの音は未だに気持ちには入らない。作られ過ぎ感があって。だから渡辺貞夫というと、案外アルバムを持っていない。

 数年前に若きヴィトウス(b)、コリア(p)、デジョネット(ds)トリオとの共演盤を聴いて、渡辺貞夫の音への興味は少しづつ湧いてきた。ビクターとの吹き込みに違和感はあったのだけど、そうか聴くならCBSソニー時代(1960年代末から1970年代中旬)と思っていた。

 そんな訳でふっと入手した1枚なのだけど、聴きたい音、時に強くビートに乗り、ときにふわっと軽く流れる、そんな变化自在の空気が楽しい。特にB面1曲めのボッサ。ヴィブラフォーンをバックに流れるフルートが心地良い。それに次のギターとフルートのデュオ。文部省唱歌のようなメロディが美しく消化されている。

 戦後日本のなかできっと彼らは「本場」に近づこうと苦闘していたのに違いないのだけど、力を抜いて(本当に抜いたのかは分からないけど)等身大の音世界を作ったときから、米国の亜種ではなく「本物」の音(オリジナリティ)を獲得したのではないか。心地良く、軽くグルーヴするフルートの音を聴きながら、そう思った。

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渡辺貞夫:Pastoral(1969,CBS)
   A1. PASTORAL
   A2. BRIDGE
   A3. TOKYO SUITE : SUNRISE & SUNSET
   B1. GARY,OUTRO SAMBA
   B2. SOMEDAY IN SUBURBS
   B3. FANDANGO
   B4. CLOSING THEME ROM “KIN-KIRA-KIN”
   B5. RITMO SABOROSO ソ
渡辺貞夫(as,sn,fl), 八城一夫(p), 増尾好秋(g), 松本浩(vib), 鈴木良雄(b), 渡辺文男(ds), 田中正太(f-horn), 松原千代繁(f-horn)