K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

高瀬アキ:Song For Hope (1981) ピアノを打楽器と感じるとき


 半年くらい前に、廉価盤のハコの中から拾い上げた一枚。500円位だったかな。当時の西独盤だったら、(たぶん)高価なのだけど、日本盤だしね。高瀬アキって名前を本当に久々に思い出した。1980年ごろに随分注目されていた記憶がある。しっかり聴こうかな、って思ってから25年ほど経っていたことに気がついた。そんなことで、ボクの部屋のターン・テーブルに載ったわけ。ボクがジャズを聴くということに散漫だった25年ではあるのだけど、高瀬アキも日本にいない25年じゃないかな。あのグローブ・ユニティ・オーケストラ(1982年だったか京大西部講堂で聴いたよ)のアレキサンダー・フォン・シュリッテンバッハ(こんなのソラで打てるのに、最近のヒトはダメ、覚えられない)の細君になって、ベルリン在住じゃなかったかな。

 そんな話はさておき、レコードを聴いてみる。フリー・フォームへの関心が強いことを主張する。だけど、その美点は破壊性に感じなかった。むしろ調性と非調整の境目、その音の遷移するような合間に、ピアノを打楽器と感じるときがあって、その瞬間に抱え込む響きの美しさ、に魅せられた。A面一曲目のソロは、そのような音のゆらぎが聴かせどころで、はっとするような瞬間が何回もあった。

 大きな期待は森山威男のドラム。B面で彼のブラシが聴こえたときは嬉しくなったのだけど、彼の紡ぐ微妙な緊張感にピアノが乗っていない感じ。それがとても残念だった。フォームに関わらず彼の真骨頂はドライヴ感(表に出ようが出まいが)だと思うので。残念な感じ。

 それでも、音の箱から飛び出すカケラを拾い上げると、当たるまで聴いてみたい、と思わせるものは確かにあるのだ。このアルバムから30年。そんなアルバムはあるのだろうか。そんな事を気にしながら、レコード盤をジャケットに仕舞って、暫く窓の外をぼんやり見ていた。見えない30年の長さ、が気になって仕方がなかったから。

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高瀬アキ:Song For Hope(Enja,1981)
   A1. Monologue
   A2. Song For Hope
   B1. Minerva's Owl
   B2. Mountain Forest
高瀬アキ(p), 井野信義(b),森山威男(ds)