K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

赤兎山(1629m)残雪のなか、漲るブナの力


沢の源頭部をつめると次第に斜度が上がり、呼吸が荒い中見上げた空の蒼さが浸みた。

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 雪のある限り山を楽しみたい、といつも思っている。最近は仕事場と自室を往復するだけの引籠もり生活なのだけど、山は別。知り合いのI氏を誘って福井・石川の県境にある赤兎山(1629m)に登ることにした。最近の岳人に紹介されていた山。白山の眺望が期待。いつものように、その朝が来るまで指折り待っていた。

 白山の登山口である市ノ瀬の手前の林道に入る。何kmか進んだところで車を止めて、山に入る。このあたり(標高800m〜1000m)には雪はなく、新緑が光を放つ春の盛り。雪解け水で沢の水流も激しく、何だか楽しい気持ちになってしまった。林道を4kmほど歩き、沢を石伝いに徒渉し、山に入る。と同時に雪が見え始める。

 途中、雪に埋もれた小さな祠を横目に、先行トレースを追って左側の斜面に取り付いた。ここでは比較的若いブナが出迎えてくれた。木々が輝き、光を放っているような新緑。力がみなぎっていた。

 祠を過ぎた時点で正規の登山ルートから外れていたのだけど気がついていない。残雪のなかだから分からない。気持ちの良い斜面で高度を稼いでいく。次第に木が疎らになっていく。途中でルートから外れていることに気がついたが、2.5万分の1で見る限り、大長山寄りの尾根に出るし、十分超えられる斜度と判断して上がっていった。帰途は小原峠から登山道沿いに降りたが、間違えルートのほうが容易だった。このときには知る由もなく、緊張して少しスピードを上げて登った。

気温は高く残雪も柔らかい。軽くキックを蹴り込み、快適に登った。

蒼天のもと生気に溢れるブナを見上げながら、息を弾ませた。同行のI氏は干支で一回り以上若く、鍛えているだけあって軽快。背中を見ながら登った。

 稜線手前で振り返ると、白山から別山がよく見え、すっかり満足した。思いの外、汗が出ている。暑い。

 登りはじめから3時間ほどで稜線へ。たっぷり写真を撮りながらの7kmなのでまずますかな。あとは大きくアップ・ダウンしながら小原峠を越えて赤兎山へ。山頂近辺は日当たりも良く、積雪はない。初夏の山に来たような感じで気持ちよい。

山頂を越えて、平原に立つ避難小屋へ。とても気持ちの良い場所で、暖かい春の風に吹かれながら、随分とのんびりとした時間を過ごした。


稜線から見る白山の雄大で壮麗なこと。時間があったので飽きるまで眺めていた。

白山も雪解けが進んでいた。

 さて小原峠からの下り、登山道は残雪の下。しばらくは広い斜面なので気持ちよく駆け下りる。そのうち、雪面が割れてスノウ・ブリッジになっているのが見えてきた。踏み抜かないように慎重に歩くうち、沢が狭まり進退行き詰まるような場所が出てきた。夏道では沢の徒渉を繰り返す箇所だろう。斜面をへつったり、積雪の厚い箇所を渡ったり。途中、落石箇所だとか小さなブロック雪崩の跡。まだ斜面の上にブロックが山積みでイヤな感じがした。結局、登路を下ったほうが随分と楽なような気がしたが、仕方がない。

 午後になって随分と増水した沢を再び徒渉して林道へ。今回、同行者がいる山行はありがたいと思った。どこか山岳会でも見つけなきゃ、ってI氏と話しながら金沢へ戻った。