K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Seattle:トロリーバスが走る街で薄明のなかに


 いつも時差に悩まされる。眠たい。だけど、その眠たさに慣れてくると、眠たいこと自体が心地よい。そのまま居眠りをしながら過ごす時間。

 夕暮れに眼を覚まして街を歩いてみた。寝ぼけた視界を横切る架線。地面に軌道が通っていないから、トロリーバスが走る街と気がつく。その瞬間に半世紀近く前の記憶に蹴られる。子供の頃読んだ、誰かの東京土産の絵本。繰り返し読んで、未だに記憶がある。跳ね上がる勝鬨橋、皇居の二重橋、架線とつながるトロリーバス。一度見たいと思ったものだ。幼い憧れだったように思う。東京近郊に移り住んだのは、昭和40年代はじめだけど見に行った記憶はない。記憶の基層に眠る東京のなかに残っている映像。

 高緯度の地方に久しぶり来ると、改めて夕暮れの長さが楽しい。いつの間にかはじまり、いつまで経っても終わらない。あれは夏至の頃だったか、ブルターニュの街へ仕事で出かけたとき、夜半を過ぎの薄明なか騒ぐケルトの人達に混じったことがあった。そんな賑やかなことはアングロ・サクソンの街にはないのだけど、長い薄明のなかで歩いたり、ビールを呑んだり。楽しい。

 夜風に吹かれてビールを呑み終えたのが22時過ぎ。未だ西の空が明るいことに、何だか楽しくなってしまった。