真夜中と夜明けの間に帰宅したら、その時間の開封が似つかわしいアルバムが届いていた。
疲れていたボクには、幻が女なのか、女が幻なのか、分からなかった。
ただ、真夜中に聴く遠い記憶の残滓、のような、
存在していないオトを聴くような不思議な感覚だけ残った。
間違いなく、録音されたそのときから、幻のようなアルバムだったのではないか。
だからやっぱり、午前3時前のポストから包みを取り出したボクは、時機にかなっていたような、嬉しい気持ちになった、
って、やっぱり夜明け前に、ぼんやりでも考えるコトじゃないよね。
紫煙を揺らすかわりに、淡い九谷焼の器に入れた、濃いヴェトナム・コーヒーの匂いと、溶かし込んだコンデンスミルクの甘ったるい感触を伴に、いつまでも聴いていたいような気持ちになった。
そして、いずれボクも幻となること、あたりまえのことなのだけど、それをぼんやりと考えていた。
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浅川マキ:幻の女たち(1988,東芝)
1.ネオン輝く日々
2.夜の匂い
3.メッセージ
4.ジン・ハウス・ブルース
5.あなたに~カスバの女~Shanghai
6.La Valse
7.エトランゼ
8.放出したエナジー
9.Rapsodie De La Russie
10.男からの声
浅川マキ(vo),本多俊之(sax,key), Bobby Watson (b), Tristan Honsinger (cell) ,横山達嗣(perc)