夜明け前に目覚めたら漆黒のなかに光が浮かぶ綺麗な星空。東の細った月が浮かんでいた。
数年前の或る朝を思い出した。ヘッドランプを灯し、オリオン座のもと、尾根に取り付いた朝のことを。吐く息が白かった。
山に行きたくなったが、それは叶わない。だから双眼鏡でオリオン座の下のほうにある星雲を暫し眺めていた。そのうちに空が白んできた。
再び、床に入った。随分長い間、見たことがあるのだけど、入ったことがなかった雑居ビルのなかを彷徨っていた。ときどき、擦れ違う顔が笑っている。どこか懐かしい顔なのだけど、思い出せない。客の居ない店が並ぶ通路を歩くと、ゆっくりと手が伸びてくるのが見える。スロウ・モーションのようだ。時間のようなものがピン留めされていた。
二度寝の後、気がつくと眩しい朝。犀川沿いも色づきはじめている。もう１１月。
