K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Keith Jarrett: Book of Ways (1986) フォークロアのようなバロックのような味わい

 最近、入手したLPレコード。キース・ジャレットの場合、沢山の楽器を奏でるのだけど、ピアノ以外の楽器が入ったアルバムは「ゲテモノ」的な感覚があって、手が出なかった。恐ろしく非ジャズ的なカオスが畳み掛けられるのだから違和感が強い。今でも、そう思っている。

 そんな感覚で手を出さなかったアルバムだけど、最近、ECMキース・ジャレットのアルバムを集めだしていて、そんなことで出元に。怖いものみたさ、の感覚で聴いてみたが、いや恐ろしく具合がいい、のに驚いた。クラヴィコードチェンバロと同じ時期の鍵盤の古楽器)のアコウスティックな響きが素晴らしく、非ジャズであるが、イケル。

 まずクラヴィコードを意識して聴いたのだけど、弦楽器(リュートとか琵琶)の音色にとても近くて、素朴な味わいがとても良い。鍵盤から弦を押さえる仕組みも「ピアノより、奏者にとって直接的」だそうで、そのあたりが柔らかな音色を作るのだろうか。だから、弦楽器を弾いているような聴こえ方、が楽しい。

 中世の吟遊詩人と化して、弦楽器をつま弾くキース・ジャレットが眼前に居るような、息づかいが伝わるような録音。フォークロアのようなバロックのような味わい、あるいは時として現代音楽のような音が流れて行く。どれも、ただ彼の激情や陶酔から生まれでたものでなく、音としての美しさや何か形而上的な高みを表す意思を伴って流れ出てくる。

 面白いのは彼の「声」のこと。勿論、溢れ出るのだけど、ソロピアノやトリオの「アレ」とは違う「コレ」。案外、楽器の特性と合っていて、表現できる音の幅が狭い楽器と苦闘しながら音を生み出す彼が眼前に居るような、不思議な感覚になる。

 もうCDへの移行期のアルバムなのだけど、録音が素晴らしく(Tonstudio Bauer)、それだけでも聴く価値があると思う。はじめて聴いて、暫くしてから山奥のK君の大きなタンノイでも鳴らしてもらったのだけど、木造家屋の音響特性も相まって素晴らしい響きでうっとりしてしまった。騙された、と思って聴いてみてほしい。

 

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Keith Jarrett: Book of Ways (1986, ECM)
LP-1
    A1. Book of Ways 1
    A2. Book of Ways 2
    A3. Book of Ways 3
    A4. Book of Ways 4
    A5. Book of Ways 5
    B1. Book of Ways 6
    B2. Book of Ways 7
    B3. Book of Ways 8
    B4. Book of Ways 9
    B5. Book of Ways 10
LP-2
    A1. Book of Ways 11
    A2. Book of Ways 12
    A3. Book of Ways 13
    A4. Book of Ways 14
    B1. Book of Ways 15
    B2. Book of Ways 16
    B3. Book of Ways 17
    B4. Book of Ways 18
    B5. Book of Ways 19
Keith Jarrett – clavichord