K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

所在のないような曖昧な夜明け


 このところ、所在のないような曖昧な夜明け、を迎える。酷くはないのだけど、ぼんやりと、この心象の行く末が気になっている。何だろう。

 今年は冬を味わう間もなかったような気がする。金沢に来た頃だっただろうか。一晩中、雪が降っていた。窓越しに雪が降る音のようなものが聴こえる。しんしん、という形容が本当に相応しい、と思ったものだ。雪が止んだとき、全ての音が解放され、遠くの鉄橋を渡る貨物列車の轟音が地表を伝ってくるような明け方。そんな夜が何とも懐かしい。再び感じることができるのだろうか。

 そんなことを千々に考え夜明けを迎える。窓を染める淡い紅の色。柔らかな春の光、のようだ。力のない、曖昧な陽を眺めながら、やはりぼんやりと遠くの山並みを眺めてすごしていた。悪くはない。

 普段より大きな鞄を持って出かけると、いつの間にか横殴りの雪。だけど春の気分をたっぷりと載せた雪だから、不思議と冷たくなかった。

 さて小松から高度を上げると、そこには春の光で満ち溢れていた。眠れない夜明けを過ごしていたことなんか、すっかり忘れてしまうような、あっけらかんとした天上の光景、を見た。そんな一日のはじまりだった。