K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

済州島の陰翳


 今日は一日仕事。夕暮れ近くになって、会議場を出ると光が眩しかった。

 昨今の日韓関係を考えると、渡韓は気が進まない。少なからぬ知己がいて、相も変わらず親しい空気は流れる。だからこそ何故、と考えるのが、もはや面倒だからだ。とかく揉めやすい安っぽいナショナリズムの応酬を抑えるのが権力者の仕事だと思うのだけど、扇動してどうする、と思う。

 ただ済州島には昔から関心を引くことがあって、一度は来てみたかった。

・長らく耽羅と呼ばれる独立王国であり、日本書紀にも記述があること(wikiによると李氏朝鮮まで、3世紀から15世紀まで続いた)、

・高麗の時代、元(蒙古)に制圧され、暫し直轄領であったこと。つまりモンゴルの支配地で、馬の放牧地として活用されたこと、

第二次世界大戦後の混乱の中、共産系勢力が住民に浸透し、それを制圧する李承晩政権側の白色テロにより数万の住民が犠牲となったこと、

・漢拏山という美しい火山があること。

 そんなことかな。大陸の江南方面からの漁民の移住は、海女の習俗などでその足跡を知ることができる。この済州島も同様で有り、海女の習俗で知られる。高句麗・高麗・(渤海)の流れを引く北方系(ツングース)の流れが強い半島住民と系譜が異なり、古代には異なる言語であったようだ。海で広く繋がる民の一翼であった、ようだ。

 そんな本土と異なる指向を持った島のようだけど、そんなこととは関係なく、本当に気持ちの良い風にあたりながら、ランニングシューズを持ってこなかったことが残念だった。観光的には韓国のハワイ、らしいのだけど、ボクは気持ちの良い風のなかで、村上春樹が書いた「ハワイの貿易風」のことを思い出していた。走ると気持ちよい風、ということで。

 そんなことを光とすると、本土と異なる歴史に由来する差別や虐殺の問題は蔭。ボクらのような訪問者には覗きもできないような深淵が何処に開いているのだろうか?

 そんなことをつらつら考えて、外に出ると漢拏山が浮かぶ。2000m足らずの山だけど、行ってみたい、と思った。