K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Ton-That Tiet: L'odeur De La Papaye Verte (1993) 眼に見えぬ映像


 映画「青いパパイヤの香り」のサウンド・トラック。ニューヨーク・成田便で魅了され、DVDとサウンド・トラックを入手した。

 就寝前に微睡みながら観ていると楽しい。筋書きなんか、どうでも良いような映画なので、眼が覚めた瞬間の映像を楽しめば良い。だんだんと目覚めているのか、寝ているのか、わからなくなる楽しさ。

 この映画のサウンドトラックはヴェトナムのTon-That Tietの作曲。一部はドビュシーらの曲が使われている。Ton-That Tietの曲は現代音楽の抽象性を背骨に、淡く民族音楽の味付けをしているような、とても美味しい。武満徹と通ずるような音の冷ややかさ、があり、映画への適当な距離感を感じさせる。暑苦しいヴェトナムの夜を映し出しても、冷凍菓子のような感触を与えている。武満のNovember stepsのような過剰なオリエンタリズムもなく、ごく自然に西洋音楽と東洋が出会ったような音。

 常に映像を見ながらすごす訳にはいかない。だけど、このディスクの音は眼に見えぬ映像であり、眼を閉じていてもなお、落とし絵のように変化する熱帯の光景を喚起して止まない。

 

映画はアップされている(字幕なし)。虫、鳥、ヒトの放つ低い音をつなぐ、淡い音楽を聴くことができる。