K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

犀川水系にて、岩魚のこと


 渓流釣りを5月にはじめ、約4ヶ月。犀川水系で釣っている。主に山女魚が釣れ、岩魚はそれほど釣れていない。未だ超初級者ではあるが、独りで、何かしら考えながら糸を渓に垂らすこと、おびただしい。

  今まで岩魚にはそんなにお目にかかっていない。また狙って釣れた感じが、まだまだだった。いつだったか、岩魚を求めて犀川上流を独りで溯行した。6月の頃。全くアタリがなく、空しく2kmほど上がった時、溝のような水路に垂らした糸に猛烈な引きがあった。ゆっくり引き上げようとすると、その重みで、0.6号のハリスが切れてしまった。仕掛けが傷んでいた、と思い、新しい仕掛けで再び。しかし、暴れる魚の尻が見え始めたあたりで、再び切れてしまった。繰り返すこと3回、得体の知れない大きな岩魚は消えていった。

 何よりも困ったことは、その岩魚がボクの記憶のなかに逃げ込んでしまったこと。再び現の世界で糸にかけるまで、ボクにその見えない姿を誇示し、渓へ誘う。間違いなくこの魚体を追いかけ、薄暗い時分から渓に通う。そして、釣果乏しく、記憶のなかの魚体を抱えたまま帰る。そんなことを2ヶ月あまり繰り返している。

 8月にはいって、ようやく何回か寸には遙か及ばない岩魚を何本が釣り上げ、山女魚とは異なるアタリのとりかた、が少し分かってきた。再び、記憶の中から大きな魚体を引きずり出す気力が漲ってきた。

 ある夕刻、ごく短時間、山女魚を釣りに行った。20cm超えの山女魚が釣れるポイントがあって、気楽に出かけている。その夕刻は坊主。まったくアタリがない。ふっと水流脇の溜まり、のような場所に垂らすと暫くして強い引きがある。案外容易に引き上げることができた。尺の岩魚(上の写真)。狙った訳でもないので、なんとも不思議な気分ではあった。

 颱風が過ぎ去り、河川は増水で暴れていた。入渓できなかったので、河川脇から、水流の緩い箇所に糸を垂れて何本か抜いた。一番大きなもので25cm。これで岩魚のあたり、が掴めてきたような気がした。はっきりしないし、遅い。合わせるのを早まってはイケナイ。

 その翌日、増水が収まった渓流に入った。2kmほどの流れをゆっくり遡行し、岩魚を8本抜いた。雨後でもあり、あたりは良かった。狙ったポイントでのひきもあり、ようやく「釣れた」のではなく「釣った」感覚を味わい、少し満足した(6本持って帰った)。

 一番大きなものは33cm。尺一寸。溝のようなポイントに隠れていた。引き上げるとき、左右に暴れたが、ゆっくり手元まで引き上げた。上あごに針を引っかけていたので、大きな口を開けた状態で引き寄せられた。蛇をも呑み込む、ということに納得してしまった。小さい方は26cm。あとは写真はないが、20cm前後のもの。

 犀川で逃した魚体、記憶のなかに逃げ込んだ一匹をようやく釣ったって、そのときは思った。楽になった、のは僅かな間。今回の33cmは0.6号のハリスで、逃げまくる岩魚を余裕で引き上げた。しかし、あのときの岩魚は0.6号を3回もばらしたよなあ、と記憶の中の魚体がいよいよ肥大してしまった。一体、どんな大きさだったのだろうか?