K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Thelonious Monk: The London Collection Volume 1(1971) あの本を読んだから、じゃなくて

 夜明け前に、また目覚めた。しばらく白んでいく空をみてから、コヒーを入れた後、針を盤面に下ろした。気が付くと、戸外は随分と明るくなってきた。

 一ヶ月くらい前にお茶の水で買ったLPレコードをようやく聴いている。セロニアス・モンクのソロ、って書くと、ああ、最近出たあの本のね、ってなるので、一ヶ月くらい前と書いたのだけど。

 大学の頃、モンクの死亡記事を読んだ記憶があって、逆にまだ存命だったと知った記憶がある。1980年前後。最後まで演奏していたエヴァンスと違って、その当時でもモンクは聴き手の記憶から彼方へと消えてしまった存在だったようだ。相当長い間、活動はしていなかった。エヴァンスよりは随分長生きだけど、それでも多分、60代。

 このBlack Lionの録音は最晩年の1971年の録音。音質はとても良い。彼のピアノの響きを十分堪能することができる。昔の、弾けて飛散した硝子の破片のような煌めきはないのだけど、案外に軽妙で、むしろ彼のピアノの古層であろうバップ以前、ラグに近い味を感じる。不思議な弛緩のなかにある演奏。モンクのソロは好物なので、うん、美味しい。

 vol.1が面白かったので、さてvol.2,vol.3を調べてみたら、ブレイキーなんかを入れたピアノトリオ。1950年代ならともかく、1970年代じゃあねえ、という内容で、無理矢理集めるほどではないように思った。

 例の村上本は読んでみたけど、やはりモンクは聴く方が面白い。文字に書き下ろせないスケールと深さ、だから。結局、彼が奇人・変人であることを、ニカ男爵夫人の語りで確認するという、イーストウッドの映画同様の後味(勿論、悪くはない)。彼の古レコードの値段が上がったらやだな、って思っているのだけど、オークションを見る限り、そんな予兆はない。ボクは改めてVogueのsoloの原盤(10インチ)が欲しくなったのだけど。

 

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Thelonious Monk: The London Collection Volume 1(1971,Black Lion)
   A1. Trinkle Tinkle (Take 3)
   A2. Crepuscule With Nellie (Take 2)
   A3. Darn That Dream
   A4. Little Rootie Tootie
   A5. Meet Me Tonight In Dreamland
   B1. Nice Work If You Can Get It
   B2. My Melancholy Baby
   B3. Jackie-ing
   B4. Loverman
   B5. Blue Sphere
Thelonious Monk (p)