K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Miles Davis: Four & More (1964) モノラル盤入手の顛末 (ボクが好きなアルバム3)

 すごく忙しくて、イヴェントが一杯なので、ブログを書いていない。最近は気張らず、記憶補助という最初の目的意識に戻って、無理をしないようにしている。

 ボクが好きなアルバムについて時々書いている。ドルフィーのLast Date、シェップのMonterux、つぎはマイルスのFour & More。買うのはピアノのアルバムが多いのだけど、ここでは何故か管楽器の奏者のアルバムばかり。実は、どのアルバムもピアノの音にぞっこん、という点では共通している。ミシャ・メンゲルベルクの点描のような音で歪んだ空間を創る、モンクにつながるピアノ、デイヴ・バレルの後ろから押し上げていくようなグルーヴ感、そして、このアルバムではハービー・ハンコックの自在変化であり、縦横無尽に走り続けるピアノ、どれも快感に満ちている。

 For & Moreの魅力は、全般的にアップテンポで攻撃的な曲が揃っていること。全く息をつかせる間、がない。異常な緊張感の中でライヴ録音が進んでいく。実際のコンサートは緩急織り交ぜ、で、急はこのアルバム、緩はMy funny Valentineに纏められている。どちらのアルバムもいいのだけど、このFor & Moreの激しい攻撃、にいつも酔ってしまう。マイルスのハイ・ノートの鋭さ、もさることながら、ハービー・ハンコックの空間を埋め尽くすようなソロ、トニー・ウィリアムスの精緻なシンバルワークは何回聴いても、驚きと昂奮に満ちている。ジャズを聴く愉しみ、そのものなのだ。同時期のフリー・ジャズが逸脱そのものが目的化していくなかで、マイルスなりの答えじゃないかな、と思って聴いている。

 先日、Fore & MoreのLPレコードが届いた。モノラル盤。既に当時のステレオ盤は入手していたのだけど、好きなアルバムなのでモノラルでも入手した。オークションでも高値(1万円以上)で、入手できないでいたのだけど、うまい購入ルートで安値で入手した。盤質も良好で、とても綺麗な音がしている。上の写真のように、手前のモノラルと向こうのステレオを聴き比べている。モノラルのほうが音圧が幾分高い感じで、奏者が若干近い感じ。でも、そんなにこだわる必要はないかな。My funny Valentineともども、モノラル、ステレオとも揃えてしまった。

 このアルバムは村上春樹和田誠のジャズ本で取り上げられている。ボクのなかでは、それが何となく面白く感じている。この本って、趣味の良い上品なアルバムが多く取り上げられている。「大人の音楽」の側面を強調し、嫌みにならない程度のジャズ話が添えられている。人生を振り返るような音楽の取り上げ方。そのなかで、なぜかキツめのこのアルバムが取り上げられている。Prestigeの4部作とかブラックホークのライヴとか、そんな方があの本に合う、と思う。だけど、実はfour & Moreが彼の好みの本音ならば、「大人の音楽の側面を強調」はある種の演出で(和田誠に合わせて)、実はこんなキツいのも好きなんだろうな、と思うこともある。まあ、本を読んで、そんなことを考えることが楽しいのだけど。

 さて参考までに(誰の?)、多少、クロニカルなことを。以下、モノラル盤とステレオ盤の写真を。ステレオ盤のレーベル(360度)に「間に合わせ風」のモノラル表示が面白い。実は、今回気になったのは、後年のメンバー(サックスがショーターに変わる)でのアルバムE.S.P.の記載が裏ジャケットにあること(両方とも)。あれっ、後年のプレスかって思ったのだけど、発売順が録音順と異なっていることを米wikiで知った。このFour &Moreは1964年2月の録音。このあとサックスがサム・リヴァース(日本ライヴ)からショータに変わる。発売はショーターに変わった後の1966年1月。だから、後年の録音(ESP)の後に発売されたことになる。レーベルのいい加減さ(360°ってステレオ!)からモノラルがオリジナルか?だったのだけど、どうもオリジナルと考えていいようだ。

 

Miles Davis: Four & More (1966, Columbia)
A1. So What
A2. Walkin'
A3. Joshua / Go-Go (Theme And Announcement)
B1. Four
B2. Seven Steps To Heaven
B3. There Is No Greater Love / Go-Go (Theme And Announcement)
Miles Davis(tp), George Coleman(ts), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)