K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Antonio Loureiro: In Tokyo (2013) 時間や空間を越えて

 時間や空間を越えて、なにやら複雑な感情が沸いてきた。暫く、それが何時から来るのか、何処から来るのか、驚きながら考えていた。このアルバムを馬車道で手に取って、はじめて聴いたのに、である。メーマリのアルバムと一緒に連れて帰ったのだけど、それと同じ位、聴き続けている。

 何回か無限循環のような気分で聴き続けていると、それが、30年位前にはじめてミルトン・ナシメントを聴いたときと、同じようなもの、じゃないかな、って思い当たった。だから、京都と大阪の間を行ったり来たり、していた頃。10代のお仕舞い頃って、気がつくと殆ど記憶喪失状態で、何を考えていたかすら覚えていない。音楽を聴いていた記憶しか残っていない。

 昔のミルトンと同じ音楽、ということではない。当時よりも、もっとアコウスティックな音。でも、そんな表面的なことではなくて、きっとミナスの音楽が持っている力、のようなものに感じ入る体験、を久しぶりにしたのだと思う。そんな感情が何回も何回もやってくる。少し、甘いような時間や空間が、記憶の彼方からやってくる。彼らのオトが持っている固有の「ゆらぎ」、のようなものが、感情のある部分を揺さぶるのだと思う。

 そんなオトが2013年の東京で流れた、という記録に驚きを禁じ得ない。とても個人的な驚きだけど。

 それにしても上手い。唄もピアノも。曲のなかでも、その色彩が千々に変わる様がとても美しい。伴奏の日本人の奏者も良き意味で控えめであり、とても好感を持てる。

 最近聴いているのは、このアルバム、メーマリのアルバム、ともにNRTレーベル。それとマーク・ジュリアナの新作。なんだか面白いなあ、と思うのはブラジル音楽であるNRTのアルバムを聴くとき、ジャズを聴く感覚の延長線にぴったりハマルこと。メルドーとの共演で知ったドラムのジュリアナを聴くとき、ジャズって感覚はあまりなくて、ビヨークとかケイト・ブッシュを聴くときと同じ感覚。随分、ジャズ・シーン(というものがあるならば)は混沌としているのだな、って思う。

www.nrt.jp

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Antonio Loureiro: In Tokyo (2013, NRT)
1. Livre (Antonio Loureiro)
2. Cabe Na Minha Ciranda (Antonio Loureiro/Siba) 
3. Tudo Que Você Podia Ser (Márcio Hilton Fragoso Borges/Salomão Borges Filho)
4. Boi (Antonio Loureiro/Makely Ka)
5. Intensidade (Antonio Loureiro)
6. Pelas Águas (Antonio Loureiro)
7. Lindeza (Antonio Loureiro)
8. Reza (Antonio Loureiro)
9. Luz Da Terra (Antonio Loureiro)
Antonio Loureiro(p,vo), 芳垣安洋(ds), 鈴木正人(b), 佐藤芳明(accord)