K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Mark Guiliana: My Life Starts Now (2014) ジャンルで音楽の外枠を認知するという近道が...


 マーク・ジュリアナはメルドーのMehliana: Taming the Dragonで、その存在を認識した。youtube上のプロモーション・ヴィデオであるHungary Ghostをはじめて聴いたとき、彼が叩き出す、細分化され、抑制はされているが偏執的なほど正確なビートに凄みを感じた。HMVのサイトか何かの記事で「トニー・ウィリアムス」への言及があったが、上手いこと書くなあ、と思った。1960年代のマイルスを聴く快感のひとつは、彼のドラムであり、シンバルの一打でビートの流れが変わるような瞬間、の快感。まさにマーク・ジュリアナの作るビート空間の快感は、それじゃないかなあ、と思う。(残念なのは、アルバムよりもyoutube上のライヴの方が昂奮に満ちていること。ライヴ出ないかなあ。)

 その後、彼が入ったアルバムをポツポツと入手しているが、期待に違わず、である。とりわけグレッチェン・パーラトのNYCライヴはいいなあ、と思っている。

 その彼の最初のアルバムを2枚入手した。これは、そのうちの一枚。上に記載したアルバムからジャズ色がかなり脱色している。ここで云うジャズ色、とはインプロヴィゼーション的な要素、である。とても良く作りこまれた音であり、彼が叩く様々なビートの味、を楽しむことができる(その部分を強調したのが、もう一枚のアルバムであるbeat music)。正直に云うと、このアルバムで示される音の総体はとても好みに合っていて、ジャズとか、そうじゃないとか、もうそんなことは関係ない、かなと思っている。ビートの快感をソフトに包装した気持ちのよいアルバムなのだ。だから、ジャズでも、反ジャズでもなくて、脱ジャズのような存在。頭のなかでは、スティーリー・ダンとかビヨークとかと同じレコード棚のなかに入れてある。

 そんな美味しくコラージュされた音の一つ一つに意識を持って行くと、そのカケラひとつひとつには大好きなジャズの破片も入っているが、ジャンルで音楽の外枠を認知するという近道が閉ざされた感もあって、戸惑いも隠せない。ソウル的な気持ち良い音楽、と割り切れるグラスパの近年のアルバムよりも、ある種の距離感を強く感じさせる、とも云える。だから、その音の気持ちよさの裏側で、「これが21世紀にはジャズと呼ばれるのだろうか」と自問自答しているのである。 (否定的なニュアンスは全くないのだけど)

 

彼のサイトで試聴可能

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Mark Guiliana: My Life Starts Now (2014,AGATE)
1. The Beginning
2. My Life Starts Now
3. Strive (featuring Meshell Ndegeocello)
4. I'm Ready
5. This One Is For You
6. Manhattan Nights (Part 1)
7. My Name Is Not Important
8. It Will Come Back To You
9. The Result Of A Ring
10. Move Over Old Guy
11. Dream. Come. True.
12. B.Y.O.B.
13. Manhattan Nights (Part 2)
14. Let Go
Mark Guiliana(ds, electronics) , Stu Brooks(b), Yuki Hirano(key), Michael Severson(g), Jeff Taylor(voice), Gretchen Parlato(voice), Meshell Ndegeocello(spoken word )