K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Branford Marsalis: In My Solitude: Live Concert At Grace Cathedral (2014) ボクらのジャズへの挽歌


 これもキースのアルバムと一緒に届いた1枚。数週間前に店頭で見かけて、手を出したり引っ込めたりしたのだけど、Sさんと話しをした時、買わなきゃだめだと云われて、素直に買った、というシロモノ。

 なあんて書くと何だかなあ、ってことなんだけど、ありがとうSさん。素晴らしい。サックス・ソロって楽しめる自信がなかったのだけど、深く、深く、楽しめた。とにかく響きが美しい。音色、そのものがとても美味しく、その分だけソロの装飾音が少なく、音色と比較的まっすぐな旋律で十分奥行きのある音世界を作り出している。素晴らしい。昔、クラシックのアルバムを出していた、というのをふっと思い出した。大聖堂でのライヴ。ジャズのサックスでありながら、境界領域まで行き渡る振幅で、彼の世界観の広さを見せつけている。なんだろう、この演奏は。ピアノもドラムも確かに要らない。ソロでしか、成し得ない音世界。

 かつてブランフォードは随分聴いたなあ。好きなサックス奏者。10年近く前、大阪のビルボード(の前の何だったっけ)でライヴも見たけど、大満足だった。だけど次第に彼の姿が薄れて行ったのは何故だろうか。ジャズが「流れ(stream)」であった20世紀の、真ん中を作っていた奏者、じゃなかったのか。最近のstream感のなさ、ってそこから来ているのじゃないかな。streamという人為的な虚構が剥がれ、前提条件なしの「プラットフォーム」になった21世紀のジャズ。だから20世紀の、ボクらのジャズへの挽歌、のように聴こえた。このアルバムは。

 否定しているのか、肯定しているのか、判然としない書き方になったけど、楽器一本と向き合うブランフォードは格好いい。そう、いつだってボクらは、こんな格好がいい音楽を聴きたい、聴ければ十分なんだよ、ということを知ったアルバムでもあった。

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Branford Marsalis: In My Solitude: Live Concert At Grace Cathedral (2014, Masterworks)
  1. Who Needs It (Steve Lacy)
  2. Stardust (Hoagy Carmichael & Michael Parish)
  3. Improvisation No. 1 (Branford Marsalis)
  4. Sonata in A Minor for Oboe Solo Wq. 132: I Poco Adagio (C.P.E. Bach)
  5. The Moment I Recall Your Face (Branford Marsalis)
  6. Improvisation No. 2 (Branford Marsalis)
  7. MAI, Op. 7 (Ryo Noda)
  8. Improvisation No. 3 (Branford Marsalis)
  9. Improvisation No. 4 (Branford Marsalis)
 10. Blues For One (Branford Marsalis)
 11. I'm So Glad We Had This Time Together(Henry Hamilton
Branford Marsalis (Saxophones)