K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

ストックホルムでワルツを(金沢・シネモンド)


 本当に久々に映画館に出かけて、映画を楽しんだ。ここ1年は忙しくて、そんな気持の余裕がなかった、ような気がする。映画館に来て、予告のフィルムを見ると、足繁く通いたくなるのだけど。

 このモニカ・ゼタールンド、スウェーデンの女性ジャズ歌手、は何と言ってもビル・エヴァンスのWalts for Debbyをスウェーデン語で唄ったことで、ジャズの歴史に足跡を残している。そんな興味から見たのだけど、父(あるいは男性)との心理的な葛藤が主題となっていて、何とも切ない内容。内容の仔細は見てもらうとして、面白いなあ、と思った点は以下のとおり:

・1960年頃は欧州は戦火から復興した頃なのだけど、実は連合国・枢軸国双方に鉄鉱石を売っていた中立国スウェーデンは国富の毀損がなく、豊かだったように見える。

・しかるに辺境意識が濃厚で、島国日本と同じような世界の中心に対する劣等感、その裏返しで国際的な評価への熱狂的な反応が強い。国の恥、的な考え方がかつての日本と同じで可笑しかった。

・北欧の人々にとってのジャズがダンス音楽であった、ということが上手く伝わった。

アメリカでのジャズ、特に黒人奏者に対する厳しい位置づけ、を改めてクローズアップするとともに、欧州でのジャズへのrespectがよくわかった。

・それにしても映画の中のエヴァンスは本物みたいだった!

・劇中の唄も良かった。

ということで、2時間あまり楽しんだ。ペトルチアーニのドキュメンタリー映画より楽しかった。1960年代の北欧に暫し滞在したような気分。

しかるに、彼女の凄惨な最期(wikiを見て)、を知るにつれ、複雑な気持であの映画を見終えたことは否めない。人の幸不幸の総量が、せいぜい倍半分であるならば、大きな成功は大きな不幸の代償を伴っている、と思えてならない。