K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

ゆっくり融解する天蓋・別院のあたり


 この数週間、比較的天候が安定している。落ち着いた、晴天が多い。爽やかな風のもと、走っている。

 それでも、ここ数日、次第に冬の予兆のような感触があって、その感触が何かというと、天蓋がゆっくりと融解していくような、そんな感じ。成層圏から連なる高い空が次第に緩んできて、そちこちに染み、のようなものが広がるような感触。

 昨日の朝は抜けるような綺麗な空だったが、流れる雲のなかに冬が混じっていて、朝のうちから雨が落ちたり止んだり。気温も下がり、金沢市街の街路樹が色づいてくる様子が見える。そんな日は、少しだけ憂鬱な気分になって、そんな気分で楽しめるレコードを聴いたり、本を読んだり、そんな一日。

 夕暮れ頃から出かけた。古い商店街。やはり雨が降ったり、止んだり。曖昧な空の表情が、いよいよ始まる冬の気分を強めていた。

 移ろう季節の節点のような時間を歩いている。広い路には人通りも絶えた夕刻。空ばかり見上げていた。

 商店街から交叉角がおかしな十字路に出る。電話局の上に立つ、もはや使われていない無線塔の周りを、送電線が絡みつくような光景を眺める。空だけが光彩を流している。そして昭和の空気がたっぷり詰まった食堂で、友人達とビールでも呑もうか、という黄昏時。