K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Joe Bonner: New Beginnings (1988) 何年、いや十何年ぶりに聴く奏者だが

 仙台で入手したレコード。名前を見て懐かしい感じがした。何年、いや十何年ぶりに聴く奏者。CDプレイヤを購入した頃、25年以上前、にCDを入手した記憶がある。Steeple Chaseのピアノ・トリオ。それを聴いて以来だから、20年以上聴いていないかもしれない。だから懐かしい、と思った。

 テレサ・レコードのアルバムなのだけど、このレーベルは1980年頃、ファラオ・サンダースの新譜Journey to the one (よく云われるspiritualってコトバは嫌いなのだけど)で知った。ジョー・ボナーもサンダースとのアルバムで知った。当時のサンダースと云うとジョン・ヒックスとのコンビを思い出すのだけど、ボナーも同時期に共演している。ミニ・マッコイのようなヒックスと似たようなピアノ奏者なのだけど、ヒックスからケレンミを落としたような、やや地味な感じ。だけど、まあ、いい味わいだと思う。

 このアルバムは27年前のレコードなのだけど、シールドの痛みもなく、長らくdead stockとして置かれたものじゃなかろうか。盤の状態もとても良く、LPレコード末期の録音の良さも相まって、本当に気持ちよく昔のJBLを鳴らしてくれる。ECMとは全く逆方向のジャズらしい音で、気持ち良い。奥行きはないが、全面に音圧が押し出される。

 ボナーのソロアルバム。このカテゴリの奏者のソロは基本的に苦手。他の楽器がない空間に、過剰に音を詰め込んでいく感じがあって、うるさくて息苦しいことが多い。このアルバムのボナーは、音を詰め込んでいく感じでもなく、ピアノの音そのものを愛でるような感じ。それが程よくて、聴いていて弛緩できる感じが楽しい。A1にはヴォーカル(というよりスキャット)とチェロ?、B1にはチェロが軽く添えられるが、悪くない。

 結局のところ、1000円未満だから、まあいいや、と思って手にしたのだけど、だからこそ、こんなレコードと行き当たり、満足したことが嬉しい。レコードを手にして、あれこれ音を想像し、期待が価格を上回ったから持ち帰った訳だけど、音や演奏が想像以上に良かったときの愉悦って、なんだかレコード蒐集の原点だなあ、と思った。youtubeで試聴可能な音源が多い昨今、薄れつつある感触だ。

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Joe Bonner: New Beginnings (1988, Theresa)
A1. Soft Breezes(Joe Bonner) 6:20
A2. The Revolution(Joe Bonner) 6:48
A3. A Child Is Born(Thad Jones) 5:25
B1. New Beginnings(Joe Bonner) 5:34
B2. Primal Scream(Joe Bonner) 6:17
B3. Ode To Trane(Joe Bonner) 7:12
Joe Bonner(p), Laurie Antonioli(vo on A1), ?? (cello on A1, B1)
Engineer: Mark Needham
Engineer [Assistant]: Dale Everingham
Producer: Joe Bonner
Producer [Assistant]: Allen Pittman, B. Kazuko Ishida
Recorded and mixed at Different Fur Studio, San Francisco, CA.