K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

富樫雅彦, Steve Lacy, 高橋悠治: 水牛@Egg Farm (2000) 始原的な身体性そして東洋的なもの

 このアルバムは、小松空港までのクルマのなかで何回も聴いていた。

 そして富樫雅彦が叩き出す、揺動、のようなものを考えていた。

 故事が頭をよぎった。日本の武士が西洋軍学を導入したとき、体の使い方が全く違っていて、西洋式に走ることからはじめた、的な話。とか、確か夏の時代以前の中国、三皇五帝の時代の神事に由来する体の動き、摺り足、だったかな、の話を読んでから、文字とは異なる、身体に宿る東洋の民族性の由来、のようなものが気になっている。

 このアルバムを聴いて、ライヴでの富樫さんが打つ音の激しさに驚いたのだけど、それ以上に彼の音に内包する韻律のようなものが、ジャズやその周辺の音楽と違って、なにか我々の身体に宿っているような始原の打撃、のようなものを体現している、ように聴こえてならなかった。始原的な身体性そして東洋的なもの、が音の向こうに聴こえてくる。その長周期の揺動のようなものが与える快感、はジャズのそれとは全く違う、のである。

 今まで、空間を生かしたような打楽器のなかで、日本的なものを強調するあり方が何となく違和感があって、それから長い間(30年くらい)聴いていなかった人なのだけど、巷間で云われるようなspritual natureとかではなくて、最期の時期の彼を聴くべきじゃないか、と強く思った。菊地さんともども、この世を去った後に知るのも如何なものか、と思うのだけど。

 このアルバムではSteve  Lacy、高橋悠治もそのような彼が叩き出す、radicalな(本来的な意味での)音場にふさわしい、密度の濃い音を紡ぎ続けている。その営みにジャズ性を感じる、という面白い二重構造、打楽器が造りだす始原的な音との。

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富樫雅彦, Steve Lacy, 高橋悠治: 水牛@Egg Farm (2009)
1. Trio 1
2. Piano Solo
3. Duo (Perc, Piano)
4. Trio 2
富樫雅彦(perc), Steve Lacy(ss), 高橋悠治(p)
Recorded on Oct 16, 2000 at Hall Egg Farm