K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

足立正生:略称・連続射殺魔(1969) 富樫雅彦・高木元輝の音

 youtubeアーカイブされている映像と音。

 

 副島さんの本を読んで知った映画。ボクの世代には忘れられない名前、永山則夫、の映画。ただし、登場人物なし、彼が見て感じたであろう風景を延々と撮影し、並べたもの。そこには昭和40年代に日本、ボクにとって懐かしい、が続いている。戦前の荒々しい資本主義が作った貧しさの残滓が未だ強く残り、自衛隊の軍靴が、確かに旧軍からの連続線にあった、ということが実感できる映像。ボクは左翼的思想には全くシンパシーがないのだけど、彼らがそのような内的衝動を持つ必然性、については強いシンパシーを感じる。そのような衝動を育んだ大地であり、決して美しいとは思えない我が国であった、と思う。(実感として)

 だから、戦後の新たな形での統制経済野口悠紀雄氏のいう1940年体制)の「成功」により豊かになった、その豊かさの崩壊過程にある社会の息苦しさ、とは異質である。豊かさの崩壊過程で登場しているサヨクや(その双子である)ウヨクは、既得権の維持を要求する歪んだ保守思想にしか見えないのだけど、どうであろうか。

 さてそんな戯れ言はともかく、この映画の音楽は、富樫雅彦と高木元輝のデュオ。1969年。「例」の事件で富樫が両足の自由を失う直前の演奏が全面に使われている。それが、1970年頃の日本の風土が垣間見せるアナーキーな空気、に強いアクセントをつけている。富樫のドラミングが、身体的条件と関係なく、生涯連続な音世界を造り出していたことを再認識した。まず構想した音があって、それを実現しているだけなのだ。ボクがかつて熱心に聴いていた頃(DENONのレコードで)と同じ心象風景なのだ。高木元輝のフリーキーでありながら、思いの他、温度が低い管の音も魅力的。

 入院中の富樫に足立が映画のサウンドトラックのテープを渡したそうだ。その後、日本赤軍の兵士となった映画監督のエピソード、が印象的であった。