K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

吉沢元春: Outfit- Bass Solo 2 1/2 (1975) 音の存在感

 音の存在感、がリアルだ。昨日、レコードが届いてから、何回も何回も聴いた。

 Free improvisationと小難しい名前がついているが、そんな感じじゃない。楽器そのもの、その楽器を弾く人間そのもの、が赤裸々に記録されている。

 古いJBLのスピーカーが苦しむように、広い音域の響きを吐き出す。時折、がたつく家具が共鳴音で参加する。

 音はジャズですらない。ただ、そこに楽器と人が居て、流れの中で唄い続けているだけ。

 コントラバスのボディが、明瞭に眼前に存在している。

 はっと気がつくと、気儘な津軽三味線を聴いているような気分なのだけど、奏者は東京生まれ(インターネットによると)だそうで、がっかり。

 そんなことはともかく、緊張感と脱力感が交叉するなか、音と対峙したその記録。それを70年代左翼の語法で説くつまらないライナーノートの劣化と鮮やかに対照的な、21世紀の今も色褪せぬ音、21世紀を見なかった奏者の贈り物。気持ち良い、体験だった。

apple musicでも聴くことができるのだけど、これは、その音楽の特性上、ナマで聴くべきであったし、それが叶わぬ訳だから、せめてレコードで大きなスピーカを鳴らすべきじゃないか、と思うのだ。

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吉沢元春: Outfit- Bass Solo 2½ (1975, Trio)
A1. Outfit 1/Spiral 11:50
A2. Bean's Dance 6:35
A3. Hiccup 2:51
A4. Distance 3:14
B1. Crossings 3:16
B2. Soft Nothings 3:48
B3. Ryuren (流連) 4:38
B4. Outfit 2/Rota 11:51
吉沢元春(b)
Producer: Kazuo Harada, Kuniya Inaoka
Recorded live at "Yoshizawa Motoharu Bass Solo Concert 2nd" at Aoyama Tower Hall, Tokyo on September 29, 1975, except B3 recorded at Kenwood Studio, Tokyo on November 7, 1975.