K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Pierre-Laurent Aimard: African Rythm(2003) ミニマル・美音・音の快楽

 アフリカの民族音楽とエマールによるリゲッティとライヒの曲を交互に組み合わせたアルバム。

 アフリカの音はミニマルそのもの。冷ややかな音感で収録されていて、それがアルバム全体として素晴らしい統一感を生み出している。エマールはピアノを美しく響かせる奏者。その正確にして余韻を美しく響かせるピアノで聴くリゲッティの曲は、快感指数がとても高い。その美音の隠れた韻律のようなものを、アフリカの音で浮かび上がらせる効果を生んでいる。

 人類誕生の地アフリカは、それ故にDNAの多様性が最も豊だという。このアルバムの奏者達はそのなかでも独自性が高い種族の音楽。そんな始原の音楽と、楽理の進化を重ねた果ての現代音楽が自然に重畳していく様が面白いし、美しい。

 数年ぶりに聴き直したが、改めて音楽を聴くことの面白さの虜になっている。

 

[2011-5-12] Radicalな音が天蓋にまで届く感覚に浸りたい

一昨日に届いたCD。録音もいいし、中身も素晴らしい。すっかり聴き惚れてしまった。構成が変わっていて、それがまた素晴らしい効果をあげている。

Pierre-Laurent Aimardはフランスのピアニスト。ドビュシー集での柔らかい・暖かい感じの音がよく、現代曲に手を出してみた。CDの半分はPierre-Laurent Aimardの器楽曲で、ライヒリゲティ(今回はじめて聴いた)の曲を弾いている。残りの半分は、なんとアフリカ(ピグミーだそうだ)の声楽・打楽器を主体とした民族音楽。とてもRadicalなヒトの音。叫ぶ・囁く・叩く。

文章を書くとき「外来語もどき」を排して書くように心がけているのだけど、ここではRadicalという言葉がぴったり。人が音楽というものを孕んだときのような根源的、そうRadicalな音。一方のピアノ曲も、20世紀という、急進的な思潮の作用と反作用の力学の中で翻弄された世紀、の音楽。時として音の過剰な装飾を排した、ときとして過激とも云えるRadicalな音。歴史以前の音(歴史が記録のうえに成り立つなら,ピグミーの楽曲は有史以前の音楽だ)と、歴史の隘路の中であたかも終点のように響く音、の協調的な溶け合いに驚きを隠せなかった。抽象化された音が天蓋まで届く感覚。

ボクがFree Jazzと呼ばれる分野の音源を買い漁っていた頃に聴きたかった音の一つ。音をめぐる長い彷徨のなかにあるのだけど、言葉で書き尽くせないような不思議な感覚にいつまでも浸っていたいと思った。そして、アンリ・ティケッシュ(ジャズ・ベーシスト)のアルバムを聴いたときと同じように、フランス人のエスニック感覚を意識の下層で捉えることができたように感じるのだ。

apple music:

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Pierre-Laurent Aimard: African Rhythms (2003, Teldec)
1. Aka Pygmies: Bossobe 2:00
2. Reich/Clapping Music 3:27
Handclaps: Pierre-Laurent Aimard
3. Aka Pygmies: Bobangi 2:39
4. Ligeti/Etude No. 4, Fanfares 3:31
piano: Pierre-Laurent Aimard
5. Aka Pygmies: Yangissa 2:43
6. Ligeti/Etude No. 8, Fém 3:07
piano: Pierre-Laurent Aimard
7. Aka Pygmies: Anduwa 4:02
8. Ligeti /Etude No. 12, Entrelacs 3:05
piano: Pierre-Laurent Aimard
9. Aka Pygmies: Banga Bang 2:39
10 . Ligeti/Etude No. 16, Pour Irina 4:04
piano: Pierre-Laurent Aimard
11. Aka Pygmies: Zoboko 1:27
12. Ligeti: Etude No. 17, À Bout De Souffle 2:25
piano: Pierre-Laurent Aimard
13. Ligeti/Etude No. 18, Canon 1:31
piano: Pierre-Laurent Aimard
14 . Aka Pygmies: Mohunga 2:33
15 . Reich/ Music For Pieces Of Wood 7:58
piano: Pierre-Laurent Aimard:
16. Aka Pygmies: Mai 3:43