K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

渡辺香津美: KYLYN Live (1979) 坂本龍一のこと

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 発売は1979年だっただろうか。ジャズを聴きはじめた頃に、「流行りのクロスオーヴァー」を聴こうと、手にした。案外、面白かった、と思った記憶がある。清水靖晃の豪快なブロウ、矢野顕子のエキセントリックなヴォーカル、が印象的だった。

 先週、職場の若い人がレコードを持ってやってきた。坂本龍一フリーク。彼のレコードを2枚持参。彼自身はレコード・プレーヤーを持っていないので、ふむふむと初めて聴く音源を楽しんでいた。

 そのとき、坂本龍一ということでかけたのは、このアルバム。2枚目の矢野顕子のヴォーカルを中心に。40年近く前の演奏だけど、今聴いても、そんなに劣化を感じないのは、ライヴの迫力と各人のソロの力量かと思う。大きく違和感を感じたのは、坂本龍一のシンセサイザ音。全体を通して、オフ気味の収録なので存在感はないのだけど、シンセサイザ特有の効果音を出すと、はっきりと浮き上がる。ということで、苦笑いをしながら聴いていた次第。現代音楽をやったり、土取利行とImprovised musicを吹き込んだり、いといろ取り組んだ1970年代だったが、今になって聴くと印象は薄い。

 身体で反応するような即興性の強い音楽よりも、頭で練り込んでスコアを書いていくような音楽のほうが得意なんだろうな、と思う。特に矢野顕子とその才能の在り方の対比、がすごい。全身これ音楽、のような人と考えて作る人。しかし、その考えは表面的なスタイルの追求のように思えてならない。スタイリッシュに思想性のようなものを出そうとすればするほど、滑稽に見える部分が何となく哀れに思えなくもない。

 つい坂本龍一のことを書いてしまったが、未だ色褪せぬ奏者達の熱演は素晴らしい。確かに彼らは若かった。その熱さ、のようなものが伝わる。そして4年前に「もっきりや」で渡辺香津美を聴いた。このアルバム冒頭の Imner Windを枯れた風情でしっとりと弾いた。確かに、30年以上の時間の意味をしみじみ感じさせるもの。長く音楽を聴いていて、本当に良かったと思った。

 

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参考記事:

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渡辺香津美: KYLYN Live (1979, Better days)
Disc-1
A1. Imner Wind
A2. Snap Dragon
B1. Milky Shade
B2. Milestones
Disc-2
A1. The River Must Flow
A2. 在広東少年
A3. I'll Be There
B1. Black Stone
B2. Walk Tail
渡辺香津美(g), 坂本龍一(key), 矢野顕子(key, vo), 小原礼(b), 村上 秀一(ds), ペッカー(perc), 向井滋春(tb), 清水靖晃(ts, ss), 本多俊之(as, ss)
Recorded Live On June,15,16,17,1979,At The Roppongi PIT INN,Tokyo,Japan

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これは本人のサイン入り

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