K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

原武史:滝山コミューン 一九七四(2007、講談社) 痛みのある記憶

 1962年生まれの原武史が、東京近郊の滝山団地で過ごした小学生時代に、学校で体験した「学級作り」の記憶を綴ったもの。ソ連集団主義教育の導入研究を行っていた「全国生活指導研究協議会(全生研)」の影響が、小学生の視点(の形)で語られる。その細かな記憶に驚くのだけど、ほぼ同世代のボクにとっても「痛みのある記憶」であり、強い感情移入せざる得ないものだった。

 著者、あるいはボクも、仲間、とか、みんな、という集団教育は体質的に合わなかった。小学校、中学校は学校に行くことを楽しい、と思ったことはさほどない。みんなで何かをやること、が不得手なのだ。

 その集団化教育を極限まで高めると、皇民化教育あるいは戦時教育と同じ轍を踏む様子が克明に記載されている。また社会党左派の影響下にあった日教組の考え方として、当時、議会制民主主義を否定し、民主集中制の考え方を推し進めていた、という時代背景とともに、あの学校の息苦しさ、が痛みとともに思い出される。だから、今でも同調圧力的なことは苦手だなあ、右や左であっても。ついでに、所謂護憲勢力が本質的に反議会制民主主義党派と組んでいるのは胡散臭いなあ、本書と関係ないけど。

 幸い、小学校高学年の担任、戦時中の師範学校卒、はさほどイデオロギー的な匂いのない方で、その2年間のみが記憶の中で解放区のような輝きがある。そして高校から私学に転じ、軛のようなものから脱した。

 過激化により、新左翼が退潮に転じる1970年代の空気を、子供としてどのように感じたか、釘付けになって、著者とともに記憶を反芻した。 

単行本:

滝山コミューン一九七四

滝山コミューン一九七四

 

文庫本:

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)