K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Peter Evans: Zebulon (2012) 断絶と連続の接続点

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 実はバンコクで仕事をしている。ときおり温い大気を泳ぐように楽しみ、あとは何処にも行かずに音楽を聴きながら仕事をしている。こんなときapple musicは重宝している。

 ピーター・エヴァンスははじめて聴く。名前は聴いていたのだが、機会はなかった。tweetでその名前を知り、早速。そこがネット世界の凄いところ。物理的なmaterialには届かない世界。

  上記tweetは新譜の話。Bandcampでの試聴で、音響的な凄さ、に驚いた。ソプラノサックスかと思えるくらいのトーン。フリーキーにならず表現する力に驚いた。頭の数音で驚愕、というのが凄い。apple musicにはないので、帰ってからダウンロードしたいと思った。凄いな、と思うと、ニューヨークの奏者達。なんか凄いなあ、ニューヨーク(あたりまえか)。

 という訳で、apple musicで2012年のZebulonを聴いてみる。ブルックリンでのライヴ。とにかく吹きっぱなしなのだけど、数年前にライヴで聴いたアヴィシャイ・コーエンとの比較で、とてもpositiveな印象。

 同じトリオでの演奏なのだけど、アヴィシャイ・コーエンはしんどかった。1960年代のオーネットの(アルト・サックスの)演奏を踏襲したような空気感の曲調で、近年のパルス的なビートととの組み合わせ。その「押し」の曲調の圧迫感一辺倒で、変化が乏しい印象。ちょっとシンドかったな。(ウィントン・マルサリスのデビューアルバムでも、そんな曲があって、好きだった記憶があるが)

 ピーター・エヴァンスのこのアルバムの面白いところは、こんな感じかなあ。

アヴァンギャルドに分類されるが、伝統的なジャズからのechoのようなものが強く、攻めのなかに過去の奏者の影がある。その味わいが美味い。もっぱらマーヴィン・ピーターソンを思い出したが、ガレスピーやら、エルドリッジやら、そんな匂いを、(ごく自然に)微かに纏っているのが魅力で、ピーターソンよりは好感を感じる。ビートがその補助手段になっているような感じ。そんなビートの使い方。

・管の音響的な色彩が多様。まず、そこで飽き、が全くこない。聴かせる。

アヴァンギャルドの難解さ、そのものに魅力を感じる人にはモノタリナイ、と思うが、そもそも論的なアヴァンギャルド的愉悦には溢れている。それが音響面にある、そこが現代的に思えるのだけど、どうだろうか。

 

断絶と連続の接続点、に彼は立っていると感じた。

 

エヴァンスのレーベル:

More Is More Records — Peter Evans

apple music:

Bandcamp:

 

 amazon:

Zebulon

Zebulon

 

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Peter Evans: Zebulon (2012, More is more records)
1. 3635 19:40
2. Lullaby 17:37
3. Broken Cycles 15:38
4. Carnival 25:35
Peter Evans (tp), John Hébert (b), Kassa Overall (ds)
Mastered by Weasel Walter
Mixed by Sam Pluta
Recorded by Jeremiah Cymerman
Recorded over two nights in March 2012, at Brooklyn.