K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Peter Evans: Genesis (2015-16) Amazing re-born "Pangea" in 21st Century

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  信じがたい音楽体験をしている、ような気がする。だけど、過去にもこんな体験をしたような気もする。静かな昂奮とともに音を聴き続けた。

 1時間半を越える音源を聴き続け3回目だろうか。これが、昔、1975年のマイルス・デイヴィス日本公演「アガルタ・パンゲア」を初めて聴いたときの心象に繋がっている、と気がついた。Free jazzにも通じるような激しいフレーズを持続的なファンクの上に載せたグルーヴ感が堪らないアルバム。彼らの1つの頂点であり、その高揚感は2度と得られていない、と思う。あのアルバムのもう一つの側面は、持続的なグルーヴが生む異次元の空間に放り込まれたような感覚、じゃなかろうか。

 その意味において、ピーター・エヴァンス・クインッテット初めてのライヴ・アルバムが生み出す感覚は、かなり「アガルタ・パンゲア」に近いように感じられてならない。リズムセクションによる持続的なリズムの付与、それを伸縮させながら異次元へ座標変換するが如きエレクトロニクス、その上を時に疾走し、時に断片的なフレ−ズをばらまくトランペット、その温度はとても低く、「アガルタ・パンゲア」が身体のなかの疑似意識を昂奮させるのに対し、これは意識の中の疑似身体を昂奮させるような、印象。とっさにwhite Pangea、というコトバが浮かんだ。

 手段としてのビートも盛り込まれているが、それがジャズ的な昂奮を呼んでいるのではない。この長い収録のなかで、様々な作曲的な行為を弄して、空間全体としてジャズ的な揺動の強いものにしている、それが強い昂奮を呼んでいるのだ。

  ボクのなかで「アガルタ・パンゲア」的な昂奮が再び「新しい音楽として巡ってこない諦念」がすっかり定着していたのだけど。まさかにも不意打ちのように聴くことができる、とは思わなかった。しかも進化途上だ。

 Amazing re-born "Pangea" in 21st Century、なのだ。

(11/1から配信されはじめた新譜。BandcampでDL。2015-16の欧州とニューヨークでのライヴを収録。)Bandcamp: 

Genesis

Genesis

 

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Peter Evans: Genesis (2015-16, more is more)
1. Fanfares - Introduction (Peter Evans) 05:12
2. Fanfares (Peter Evans) 08:22
3. Genesis/Schismogenesis - Stage (Peter Evans) 1 05:31
4. Genesis/Schismogenesis - Stage 2 (Peter Evans) 08:51
5. Genesis/Schismogenesis - Stage 3 (Peter Evans) 04:30
6. Genesis/Schismogenesis - Stage 4 (Peter Evans) 02:09
7. Patient Zero (15 Scenes) (Peter Evans) 15:26
8. 3 for Alice: Intergalactic (Peter Evans) 12:08
9. 3 for Alice: Interlude 1 (Peter Evans) 04:09
10. 3 for Alice: Elemental (Peter Evans) 09:33
11. 3 for Alice: Interlude 2 (Peter Evans) 06:31
12. 3 for Alice: 12 Earthly Branches (Peter Evans) 14:36
Peter Evans (tp, piccolo tp), Sam Pluta (live electronics), Ron Stabinsky(p, synth), Tom Blancarte(b), Jim Black(ds, perc, electronics)
Recorded live in Europe November 2015 and NYC February 2016