K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM2401) Elina Duni: Dallëndyshe (2014) 綺麗に再構築された彼女の故国の音楽

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 今年の来日でその存在を知った亡命アルバニア人の歌い手と、そのアルバム。 

 アルバニアオスマン帝国治下であった影響で元来イスラム教徒が過半の国であったが、第2次大戦後は孤立した社会主義政権に。ソ連にも叛旗を翻した毛沢東主義の国でった記憶がまだ残っている。東欧の社会主義崩壊の際、アルバニアは無秩序に陥ったみたいだけど、今はどうなっているのだろうか。そのような混乱のなかで亡命したのが、エリーナ・デュニ。

 似たような辺境のエスニック的な味が売りの奏者にアルメニアのティグラン・ハマシアンなんかも居るのだけど、最近、「アルメニア味」が一本調子なので飽きてきた。何回も同じタネの「音の手品」を聴いても、面白くないのだ。

 このアルバムでは、そんな過剰なエスニック色はなくて、むしろ、透明であっても淡く血の色が滲んだようなエリーナ・デュニの声と、ピアノが粒立つコイン・ヴァロンのピアノが繰り広げる音の組み立て、がとてもスムーズで気持ちが良いアルバム。

 エスニック系の奏者のアルバムって、そのエスニック風味の異物感を愉しませる、まさに料理と同じような味わいが多いのだけど、これは違う。確かに素材はアルバニア音楽から取っているが、明らかにジャズへ再構築されていて、エスニックの味わいは薄い。隠し味、のようにも思える。綺麗に再構築された彼女の故国の音楽が、21世紀のジャズとして新たな命を得ている、と思う。だから、エスニックな味に引っかかり、を求めるとがっかりする。しかし、毎日聴いても飽きないような、音楽としての完成度の高さ、を得ていると思う。

 歌い手と楽器奏者の関係も聴いていて面白い。ECMだから決して単なる伴奏者ではない。またインタープレイの応酬ということでもない。歌い手が音場の外枠を囲い込み産屋をつくり、そのなかで楽器達が音を孕んでいくような印象。彼女の世界を、ピアノトリオが彼らの言葉に翻訳していくような、そんな印象。

 録音も違和感はなく、残響も適量。いいアルバムだなあ。

 



Dallendyshe

Dallendyshe

 

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(ECM2401) Elina Duni: Dallëndyshe (2014)
1. Fëllënza (Muharrem Gurra) 6:03
2. Sytë (Isak Muçolli) 5:09
3. Ylberin (Traditional From Albania) 5:05
4. Unë Në Kodër, Ti Në Kodër (Traditional From Albania) 6:12
5. Kur Të Pashë (Traditional From Kosovo) 4:48
6. Delja Rude (Traditional From Albania) 5:19
7. Unë Do Të Vete (Traditional From Albania) 4:59
8. Taksirat (Traditional From Albania) 3:27
9. Nënë Moj (Traditional From Albania) 4:14
10. Bukuroshe (Traditional From Albania) 4:16
11. Ti Ri Ti Ti Klarinatë (Traditional From Arvanitas) 2:49
12. Dallëndyshe (Traditional From Arbëresh) 2:46
Elina Duni(voice), Colin Vallon(p), Patrice Moret(b), Norbert Pfammatter(ds)
Design: Sascha kleis
Cover And Liner Photos: Nicolas Masson
Engineer : Gérard de Haro, Nicolas Baillard
Producer: Manfred Eicher
Text By [English Translations Of Lyrics In Booklet] – Kozi Nasi
Recorded July 2014 , at La Buissonne, Pernes-les-Fontaines
Released: 17 Apr 2015