時間が止まった、ようなアルバム。これが1970年代のアルバムと云われれば、そうだと思うだろう。そこに時間の流れがない。中庸なインタープレイを交えたジャズの小品、なのだ。それがECMに相応の数がありそうで、あまりないようにも思えるがどうだろう。
ボクはコープランドをECMで聴くのははじめてじゃないかなあ。ギターの陰で寄り添うような控え目の伴奏。それが美しい。ベースの太さも綺麗だし、ドラムのキレも小気味よく響く。さっき1970年代のアルバムと云われれば、と書いたが、あくまで思念の1970年代で、似たようなアルバムは思い出せない。21世紀の今、改めて無駄を削ぎ落とした音が、そこにある、ということだろう。太い骨格の由来が1970年代、アバークロンビーがECMでアルバムを出し始めた頃から変わっていない、ということだと思う。
派手な感じは全くないのだけど、ふっと体に浸みていくような親しみと優しさ、それでいてECM固有の陰翳のある音場、それで十分じゃないかと思う。録音はニュヨークのアヴァターでフェイバー。期待通りの適度な残響。黙って聴いていれば良いアルバム、なのだ。
追記:
今月届いたECMのレコードは黒のインナー・スリーヴ。黒の下着、のようで、なかなか艶っぽい、と思うのは、かなりレコード・フェチだなあと自覚。
Up And Coming [12 inch Analog]
- アーティスト: John Abercrombie Quartet
- 出版社/メーカー: Ecm
- 発売日: 2017/01/13
- メディア: LP Record
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(ECM2528) John Abercrombie: Up And Coming (2016)
A1. Joy (John Abercrombie) 4:09
A2. Flipside (John Abercrombie) 2:50
A3. Sunday School (John Abercrombie) 7:15
A4. Up And Coming (John Abercrombie) 5:47
B1. Tears (Marc Copland) 7:34
B2. Silver Circle (Marc Copland) 7:04
B3. Nardis (Miles Davis)
B4. Jumbles (John Abercrombie) 5:57
John Abercrombie(g), Marc Copland(p), Drew Gress(b), Joey Baron(ds)
Design: Sascha Kleis
Painting [Cover Pastel] : Sheilah Rechtschaffer
Photography By [Liner Photos] : Bart Babinski
Engineer: James A. Farber
Engineer [Assistant] : Nate Odden, Thom Beemer
Producer: Manfred Eicher
Recorded on April/May 2016 at Avatar Studios, New York